「落としどころのワナ」は、いつもと同じ意見しか出ず、想定されていた結論を疑うことがないため、予定調和的で落としどころを見つける議論に終始してしまうことです。
「相互不可侵のワナ」は、核心に踏み込むと面倒になることが分かっているので、大事な問題や考え方の違いを明らかにしないでおこうと、お互いにけん制し合っている関係のことです。
「小手先さばきのワナ」は、表面的な事象にとらわれ、「どうやるか」という手段を検討するばかりで、「何のためにやるのか」「何を実現したいのか」という目的意識が不足した状況のことです。
「客観性のワナ」は、一見客観的でもっともらしい意見が出ているのですが、リスクを負って自分がやるという当事者意識が不足した状況のことです。
「受け手不在のワナ」は、意見を言っても受け止める人がいない、あるいは言葉の定義があいまいであるため、言いっ放しで議論が積み重ならない状況のことです。
このような罠に陥らないように、「話が深まらないチェックリスト」の該当項目に気を付けながら議論していくとよいでしょう。事実情報に基づいて全体像をとらえた上で、メンバー共通のより大きな目的は何なのか、本当の問題は何なのか、を考えることで意味のある結論を生み出しやすくなります。目的意識をもって議論することで、メンバーの意欲も湧くので、決めたことが実行されやすくもなります。
このように、誰かが決めたことを「やらされ感」でやるのではなく、自分の意志で「やってみよう」と思えるような会議にできると、目標が実現しやすくなるだけでなく、メンバーの幸福度も高まるのです(第1回記事参照)。
「働き方改革」の名のもとで、ノー残業デーを実施したり、定時になったら強制的に消灯やPCシャットダウンをしたりといった話をクライアント企業からもよく聞きます。会議を効率的にするために時間制限を設けている例もあるのですが、そもそも会議の目的を設定せずに時間を短くしているだけの企業も少なくありません。
働き方改革が形式的だったり、社員が意味を感じないままやらされていたりして、実際はうまく進んでいないことも多いように感じます。
話の焦点が、労働時間の削減や、時間あたりのアウトプット量に向けられていないでしょうか。そういう「効率性」の観点ではなく、メンバー同士のコミュニケーションを通じて、お互いの「やってみよう」因子を刺激し、チームで新たな価値を「生む」という、本当の意味での「生産性」を意識することが大切なのです。
滝口健史(たきぐち たけし)
株式会社スコラ・コンサルト
マーケティングリサーチ会社を経て、2009年、スコラ・コンサルトに参画。従業員サーベイを活用した組織の実態把握のほか、ワークショップ開発や社内の情報システムを担当。事実情報や議論を積み上げることで新たな洞察が導かれるプロセスを日々探求している。早稲田大学ビジネススクール修了。
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