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» 2018年11月05日 08時00分 公開

幸せと生産性を考える:“あ・うん”の呼吸はロジカルシンキングを超えるのか? 日米企業の生産性 (1/3)

米国企業と日本企業では生産性の高め方が異なるという。双方の組織で実際に働いた筆者が解説する。

[野口正明,ITmedia]

 こんにちは。スコラ・コンサルトのパートナープロセスデザイナーの野口正明です。私は日本の大手企業をキャリアの皮切りに、米国企業への転職経験を経て、現在は主に日本の大企業の組織風土改革を支援するコンサルティングに携わっています。

 前回は、働き方の先進企業とされるサイボウズが、俗に言う「生産性」に振り回されることなく、社員一人一人がどうすれば働きやすいかを考え続けることで、生産性の質を高めている姿を見ました(関連記事:離職率28%だったサイボウズは、どうやってブラック企業から生まれ変わったのか)。

 確かにサイボウズという組織は、生産性を考える上でひとつのモデルになり得るでしょう。しかし今回の協働執筆メンバーの間では、それが唯一の解であるとは考えていません。私からは、自分の体験に基づきながら、異なる2つのモデルを示せたらと思います。

米国企業に見る生産性の高め方3カ条

 最初のモデルは、合理的・戦略的と言われる米国企業の生産性の高め方です。

 私は10年以上の日本企業でのビジネス経験を経て、米国企業の日本支社に転職しました。当初は、米国型の効率的な仕事のやり方に、圧倒されっぱなしでした。私が籍を置いたのはニューヨークなどの東海岸に本拠を置く伝統的な米国企業です。

 米国企業独特の生産性の高め方だと感じたのには3つあります。

 1つ目は、お題目ではないミッションやビジョンがあり、それを実行するための行動基準も明確です。中長期的なビジネス戦略は、トップから常に明示され、四半期ごとにきっちり結果が検証されて、対策が講じられます。

米国企業ではどのように生産性を高めているのか?(写真提供:ゲッティイメージズ) 米国企業ではどのように生産性を高めているのか?(写真提供:ゲッティイメージズ)

 2つ目は、個々の職務の権限と責任がはっきり決まっているので、会議の数や時間が飛躍的に減ることです。自分の職務に集中できるため、深夜残業なんて存在しません。日本企業で会議と残業に辟易(へきえき)していた私にとっては天国のようでした。

 3つ目は、仕事の対象を、常に言葉と数字で誰の目から見ても明らかなように定義するのを徹底していることでした。これが私にとって一番大きな衝撃であり、かつ学びになりました。忘れられない上司とのエピソードがあります。

 当時、人事マネジャーの職にありましたが、転職早々に社内のキーパーソンを紹介してもらい、彼らの現状認識や問題意識をひたすら聞くことから始めました。彼らから異口同音に出たことを基に分析すると、問題は「一体感がない」ことだと私は受け取ったので、その言葉を使って上司に報告したのです。

 すると、上司は「一体感などという実体のない言葉は使うな。それから、問題があると言うなら、どのくらい問題なのかは事実として数字を使って説明せよ」と。つまり、目に見えにくいものはあやふやで、存在すら疑わしい。目に見えることに特化して施策を立てることこそ、生産性アップの王道なのだということでした。

 私は今でもこの3つの姿勢の違いが、日本企業と米国企業における生産性の大きな差の主因だと認識しています。米国型の生産性向上のスタイルを身に付けた私は、その後、順調に成果を上げられるようになりました。

 その一方で、目に見えにくいものにこそ価値があるという日本人的な感覚は、私の中でモヤモヤとして蓄積していくことになりました。結局、米国企業でのキャリアを捨て、日本的な特性を大事にしながら、日本企業の風土変革を支援する現職に移りました。

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