東急の鉄道分社化で「通勤混雑対策」は進むのか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/5 ページ)

» 2018年10月05日 07時30分 公開
[杉山淳一ITmedia]

 東京急行電鉄は9月12日、鉄道事業を分社化する方針を発表した。私はこの組織改革を「混雑対策への大きな一歩」とみる。鉄道事業の分社化は、他の事業分野とは異なる意味を持つ。公共交通事業ならではの選択肢ともいえる。

 鉄道会社の分社化と持ち株会社設立は過去にも例がある。2005年に阪急電鉄は阪急ホールディングス(HD、現・阪急阪神HD)を設立。持ち株会社へ移行した。06年には西武鉄道が西武HDを設立。09年には相模鉄道が持ち株会社制に移行した。また、16年には京阪電鉄が京阪HDに移行した。

 鉄道会社が鉄道事業を分社化し、持ち株会社に移行する。これ自体は珍しくない。ただし、東急電鉄の場合は他の例と比べてネットの反響が大きかったように思う。東急電鉄は不動産部門が成功している一方、鉄道部門の輸送トラブルや混雑対策が課題になっているからだ。短絡的には、「東急が鉄道部門を見限り、不動産事業へ軸足を移した」ように見えるかもしれない。

 しかし、私はもっと楽観的だ。むしろ、鉄道事業分社化によって混雑対策は加速すると考える。鉄道会社の事業分割には他の産業分野と違う要素がある。独立採算を明確化し、沿線自治体と連携しやすくする目的もあると考えるからだ。

photo 東急電鉄が鉄道事業を分社化、さらなる線路改良の布石か
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