ハードウェア製品の開発販売が大手企業の独擅場だったのも今は昔。スマホやインターネットと連携することで価値を高めた製品を開発する、いわゆるIoTスタートアップが続々誕生している。
一方で、これまでものづくりを担ってきた家電メーカーも、社内にベンチャー的組織を置くとともに、外部のIoTスタートアップとの連携を強化している。モノづくりのシェアワーキングスペース「DMM.make AKIBA」のスポンサーを務めるシャープも、その1社だ。
「スタートアップが世界を引っ張ってきている。スタートアップとつながる、いつでも会話できることが必要ではないか」(シャープ研究開発事業本部 オープンイノベーションセンターの金丸和生所長)。そんな思いから、シャープは2年前から、IoTスタートアップの支援活動を開始した。すでに26社がシャープの支援プログラムに参加。7社は、量産を支援するコンサルティングプログラムにも進んでいる。
そのうちの1社、tsumugは、シャープの支援を受けてスマートロック「TiNK」を開発した。シャープは出資も行っており、生産のサポートのほか今後、生産受託の可能性もあるという。
シャープのIoTスタートアップ支援は、ものづくりの基本的なノウハウを6日から10日で伝授する「モノづくりブートキャンプ」と呼ぶコースと、実際の量産仕様の決定、工場選定、最終製品の品質確認をハンズオンで支援する「量産アクセラレーションプログラム」の2種類を用意する。
「(量産は)最初から中国の工場でというのはしんどい。中国の工場は『何でもできます』というが、けっこうハードルが高い。スタートアップの方は、新機能を作るという点では優秀でスピード感があるが、工場とのやりとりでは経験がものをいう」(金丸氏)
シャープの量産アクセラレーションプログラムでは、試作や量産を行える工場を紹介するほか、部品メーカーとの協議に参加して、テスト結果を見てアドバイスするなど、単なるコンサルティングにとどまらない踏み込んだ支援をすることが特徴だ。
いずれのプログラムも有償で提供しているが、「相手をパートナーとして扱う。有償とすることで、相手方に見返りを求めることなくやっていける」(金丸氏)という狙いだ。オープンイノベーションセンターでは、IoTスタートアップに出資するファンドは持っていないが、シャープのビジョンと一致するようなら出資も行う可能性があるという。
シャープは、この秋からモノづくりブートキャンプのプログラムを拡充するなどして、さらにIoTスタートアップとの連携を強化していく方針だ。2019年春までにスタートアップ100社との連携を目指すとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング