日本水産は冷凍食品、ソーセージ、缶詰といった食品の製造を行っている。寄贈する商品としては、長期間保存ができる魚肉ソーセージや缶詰を思い浮かべる読者も多いかもしれないが、実はこの商品はほとんど廃棄されないという。遠藤氏によると「営業担当者がほとんど売り切ってしまうため」だという。では、賞味期限切れが近づいた商品はどうか。こちらについては「食品を扱う企業としていかがなものか」ということで、寄贈品の対象から外れたそうだ。
さまざまな検討を社内で重ねた結果、「冷凍食品の抜き取り検査品」を寄贈することになった。日本水産では国内外の工場で商品を生産しているが、海外から輸入してきたものは、検疫所において規格基準に適合しているかどうかがチェックされる。検査は箱の中にある一部の商品を抜き取って行うのだが、検査品の残りは販売できないルールになっている。品質上、食べるのにはまったく問題ないのだが、それまでは仕方なく廃棄していた。
日本水産は2HJと協議した結果、タンパク源となるから揚げやつくねといった商品を寄贈することになったが、実現のためにはいくつか超えないといけないハードルがあった。
まず、寄贈品の転売・再販を防ぐ措置として寄贈品だと分かるステッカーを箱に貼ることにした。次に、トレーサビリティーを確保するため、寄贈商品がいつ、どこの施設に、何個送られたのかが分かる「寄贈品配送記録証」を発行することも決めた。何か問題が発生したときに、原因分析を容易にするためだ。さらに、冷凍食品は常にマイナス18度以下の環境に置かないといけないが、責任をもって商品を施設に届けるために、自社グループの車で配送することにした。
これらの方針を踏まえ、商品の配送体制を築くことにした。基本的な流れは次のようになる。まず、抜き取り検査品を日本水産のグループで管理する冷凍倉庫に運ぶ。在庫状況をもとに寄贈する食品のリストを同社のSCM部から2HJに送付する。2HJは提供施設と連絡を取り、施設ごとに必要な商品を把握し、日本水産のSCM部に発注する。発注をもとに、冷凍倉庫から各施設に直接商品が運ばれる。
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