企業価値5000億円超 ホンダが頼る「顔認証AIベンチャー」香港トップを直撃中国公安も採用(2/4 ページ)

» 2018年10月25日 08時00分 公開
[武田信晃ITmedia]

設立わずか4年目でホンダと提携

――センスタイムは香港だけでなく京都や深センにも拠点を構えています。どういった役割を果たしているのでしょうか?

 日本法人には京都本社と東京オフィスがありますが、特に京都は、最も大切な研究開発(R&D)センターで、京都大学に留学経験もある勞世竑(ロウ セイコウ)が社長として働いています。

 香港本社は全体の経営のみならず、香港中文大学と連携した先行技術の開発や、提供しているサービスのアルゴリズムの開発などを行っています。当社は顔認証技術を備えた「SenseFace」など10以上のサービスを提供していますが、アルゴリズムの開発は非常に重要です。

 深センでは、製品開発などをしています。最近、中国の成都と杭州にもオフィスを構えました。成都はスマートデバイスを開発する企業が多く、世界展開のための拠点として適していると考えています。杭州に本社があるアリババと当社が提携したこともあり、杭州オフィスはEコマースの拠点とすることにしました。

phot 多くの企業と協業している(センスタイムジャパンのWebサイトより)

――自動運転のAI技術に関して、ホンダと提携しています。具体的にはどのような内容なのでしょうか?

 17年12月に、5年間に渡る共同研究開発に関して提携をしました。センスタイムが持つ「移動体認識技術」と、ホンダの技術である「リスク予測」や「シーン理解」といったAIアルゴリズムを融合させることで、複雑な状況の中でも自動運転を可能にすることを目指しています。契約期間中に、まずはレベル4(高速道路など特定の場所に限って、運転に関わる全ての操作を行う。緊急時の対応もシステムが担う)まで達成したいと考えています。

 自動運転ばかりに話題が集中していますが、AIを駆使した顔認証にはさまざまなメリットがあります。例えば、何かを申請する際に必要な身分証明書が不要になったり、現金自動預け払い機(ATM)でも暗証番号がいらなくなったりするのです。また、オフィスの入り口に顔認証技術を採用すれば、セキュリティーの向上にも役立ちます。便利な世の中になるのは間違いないのです。

――センスタイムの顔認証AI技術は、「100台以上のクルマの動きをリアルタイムで把握できる」といわれていますが、現在のカメラの性能はどこまで発展したのでしょうか? またカメラの性能を上げることで何を目指しているのでしょうか?

 カメラの性能は、明るさなどの外部要因にも影響を受けますが、男女の識別だけなら、500メートル先でも認識できるのです。ただ、詳細な情報が必要になるのであれば、その分だけ認識可能な距離は短くなっていきます。

 従ってカメラに求められる性能も、顧客の需要によって変わるといった方がいいでしょう。詳細な情報を必要としない顧客にとっては、現在の性能で十分だといえます。だから必ずしもカメラ自体の性能を上げなければならないというわけではないのです。

 当社はメーカーと共同でカメラの開発をしていますが、製造はしていません。カメラのハード面ではなくソフトの部分を担っているのです。

 カメラの性能も重要ですが、もっと大事なのがソフト面であり、アルゴリズムの開発だと考えています。だから当社はアルゴリズムの改善に注力しているのです。

――自動運転技術を進化させる上で、他国や他社の取り組みで注目している動きはありますか? また、日本をライバルだと思っていますか?

 特にライバルと考えている国や企業はありません。自分たちの技術を常に向上させ、現在のポジションを保持することが大切だと思っています。

phot AIの性能を実感できるドライブシミュレーター(センスタイム提供)
phot 新しいショールームでAR(拡張現実)を紹介するディスプレイ(センスタイム提供)

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