ICOに代わる資金調達手段「ILP」とは何か?blockhive創業者に聞く(5/6 ページ)

» 2018年10月29日 16時57分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 「ILPに参加した人には通称FLAT(Future Loan Access Token)というトークンを発行している。マンションを借りるとき、鍵と賃貸借契約の両方があるように、ILPにおける法的な依拠は電子契約、トークンは鍵に当たる。鍵を使うと契約を結び直すことができ、その瞬間にトークンの元の持ち主の契約が無効になるという仕組み」(日下氏)

ILPの仕組み(blockhive資料より)

 FLATはイーサリアム上で動くERC20トークンであり、他人に譲渡が可能だ。FLATが他人に譲渡された場合、受け取った側と貸し付け先で自動的に新たな契約が締結され、元のトークンの持ち主の契約は破棄される。これによって、将来の元本および利息の返済の権利を引き継ぐことができ、ローンの再契約という面倒な手続きを、ブロックチェーン技術を使うことで自動化した。※ERC20トークンとは、イーサリアムのブロックチェーンを使う仮想通貨の総称。ERCはEthereum Request for Commentsの略で、イーサリアム上でトークンなどを発行する際の統一規格。発行されているICOトークンはほぼERC20に準拠している

 blockhive自身が、このILPの仕組みを使って約400万ユーロ(約5億円)の資金調達を果たしている。さらに、このときFLATとしてhiveトークンを発行した。hiveトークンは9月14日、モスクワに本社を置く仮想通貨取引所LATOKENに上場している。これによって、資金を貸し付けたユーザーは、市場を介してその権利を譲渡することが可能になった。いわばセカンダリーマーケットが成り立った形だ。

資金調達の多様化と規制

 当初、決済や送金手段を革新する技術と見られることの多かった仮想通貨/ブロックチェーン技術だが、このように、事業の資金調達手段としても、世の中を大きく変革する可能性を秘めている。

 blockhiveは、自身のILPの成功を受けて、ILPを幅広く利用できるよう、子会社のtokenoteを通じてILPのサービス化を進めている。この仕組みを使えば、さまざまな事業でILPを使った資金調達が可能になる見込みだ。法規制が不透明なICOと違い、ILPは従来の法律で定義される貸し付けの、契約の部分をブロックチェーン化したものなので、各国の規制へ対応しやすいという特徴がある。

 一方で、世界中から資金を集められ、小口にも対応可能で、さらに実施スピードが早いというICO同様のメリットも持っている。

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