揺れ動く新卒学生の就活。企業の採用活動時期を定めた「就活ルール」については、経団連が2021年春入社の学生から廃止を表明するなど二転三転が続いている。ただ、現場では既に従来の採用の在り方が変わりつつある。ビジネスモデルの急激な変化や働き方改革で、求められる職場や人材像が変容しているからだ。新卒就活の岐路ともいえるこの時代、試行錯誤する企業や学生を追った。
人手不足が続く新卒採用において、決して売り手優位とは言えない市場がある。外国人留学生だ。ディスコが2018年夏に19年3月卒業予定の、同社の就活サービスに登録している大学4年生と大学院修士課程2年生の外国人留学生約280人に行った調査では、彼らの7月時点の内定率は約4割。前年より上がったものの、国内の学生の半分程度にとどまった。
同調査によるとエントリーシートの提出数で外国人留学生は国内学生を上回っており、決して就活に不熱心なわけではないようだ。日本で就職を希望する留学生の採用はなぜ進まないのか。その実態を追った。
ピョーピェッソンルインさん(29)はミャンマー出身の東洋大学4年生。ヤンゴン外国語大学の日本語学科を卒業後、ミャンマーでの社会人経験を経て日本に留学した。今は東洋大の経営学科で学びながら、既に内定をもらっている会社、MCIT JAPAN(東京都豊島区)でアルバイトとして働いている。職場での愛称はピョーさんだ。
同社は船員用の航空券を専門に扱う。大型船に勤務する船員は遠方の国に行くことになるが、帰りも同じ船で帰るわけではない。多くの場合は片道の船旅になるため、帰りは航空機を利用する。船員の国籍は多様で、帰国する際に乗り継ぎ地点の国に簡単に入国できなかったりする。スケジュールを調整して船員がうまく帰れるよう、英語などを駆使して航空券を手配するのが仕事だ。
同社の主な取引先は船員の派遣会社。山口精一社長はここ数年、ミャンマー人船員を派遣する企業との取引を強化する方針を取っており、ミャンマー人社員の採用を進めてきた。最初は日本に住む社会人を雇ったが育成が思うようにいかず、新卒を採用することにした。
18年には、ミャンマーの大学を出た後に訪日して日本語学校と専門学校で学んだキンサンディエートォンさん(24、通称サンディさん)も既に採用している。同社は19年をめどにミャンマーに現地オフィスを設ける予定という。山口社長は2人の語学や事務能力に太鼓判を押しており、ゆくゆくは日本の本社でミャンマーのオフィスとやりとりしたり、現地に渡ってオフィスを仕切る役割を期待しているという。
「働くのは楽しい。みんな優しく教えてくれる」と流ちょうな日本語で話すピョーさん。ただ日本の就活は戸惑うことが多かった。ミャンマーの就活は大学卒業後に始まる。日本ほど何度も面接を重ねることはなく、その場で採用を決めることが多い。日本の就活の定番、適性検査のSPIも苦手だった。日本語で問題をすべて把握するには時間が足りない。日本では最初、グローバルな仕事を希望して大手商社を中心に受けていたがうまくいかず、ミャンマーとかかわりのある会社に的を絞る中でMCIT JAPANと出会った。
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