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ゼロから50人に急増、なぜグロービスは異質のエンジニア採用に成功しているのか?生まれ変わる組織(5/6 ページ)

» 2018年11月07日 06時30分 公開
[やつづかえりITmedia]

エンジニアとビジネスサイドの化学反応で業務を効率化

 新たなビジネス創出を目的としたエンジニア採用だったが、全社的な業務の効率化という予測していなかった効果ももたらした。

 18年4月に田邉さんは、社内からの要望を受け付けてルーティン・ワークを自動化する「目安箱プロジェクト」を始めた。

 きっかけは、部内での会議運営に非効率さを感じたことだった。

 「この会社は会議が多いな、と入社したときから感じていました。アジェンダやゴール設定が曖昧なまま会議が開催されることが多く、主催者も参加者も忙しい……という状態だったのです。そこで僕がやったのは、部内で予定されている会議に合わせてアジェンダを書き込むテンプレートを作り、『ここに入力してください』と呼び掛けることでした。事前にアジェンダが書き込まれなければその会議は中止にしよう、というルールも作りました。最初は手作業でやっていたのですが、他にやってくれる人もいないし、毎週30分は取られる作業になってきたので、スクリプトを書いて自動化したんです」

 自動化による効率化を実感した田邉さんは、全社単位で見れば自動化できる業務がたくさんあるはずだと考えた。そこで「目安箱プロジェクト」を始め、社内から自動化してほしい作業を募集した。

 メールやSlackで全社に呼び掛けたところ、5カ月で40件くらいの応募があった。応募フォームには、作業の頻度、1回あたりの作業時間、作業に関わる人数を入力することになっており、この情報を参考に、自動化した場合の1カ月あたりの削減時間が自動化の開発工数より下回るものを選んで順次対応。これまでに事業部内外で15件程度の業務の自動化を実現してきた。

 「目安箱プロジェクト」を始めた田邉さんの狙いは、業務の効率化だけでなく、他部署の社員との関係を作ることにもあった。「会社の歴史や背景、他部署の業務の理解がなければ良いものは作れない」と考えていたからだ。

 もくろみ通り、田邉さんは依頼内容を見て「この業務は、以前に依頼されたあの業務と関連している」といったことが分かるようになってきた。今は田邉さんと有志のエンジニア、デザイナーの3人が業務の10〜20%以内の時間で対応しているが、他のエンジニアにもこの活動を広げ、皆が他部署の業務の理解を深めていければ、と考えている。

 この活動は既存の社員にとってのメリットも大きかった。プロジェクトがスタートして5カ月で月300時間以上も削減したという効果はもちろん、自動化まで至らなくても「こういうツールを使えばもっと速く仕事ができますよ」といったアドバイスが効率化につながった。あるいは、「そもそもこの業務は必要か?」と仕事の中身を見直す契機にもなって、田邊さんたちの活動は社員にとても喜ばれているという。

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