実際の飼育員に張り付いてみることで、単独制多担当持ちの効果を見てみることにしよう。専門学校を卒業後、2015年にアルバイトとして入社し、現在は正社員として働いている竹山勝基(よしき)さん(23歳)は、「竹島水族館で働くことが大好きなので、どんな仕事でもやりたい」と公言する単独制多担当持ちの申し子のような若者だ(POP書き職人でもある竹山さんの記事はこちら)。
彼が主担当になっている水槽は多い。まずは竹島水族館のメインである深海水槽と、その一部に触ることができる「さわりんぷーる」だ。
「夏場は深海生物の仕入れが少ないのに、お客さんが多くて、しかも日焼け止めクリームなどで海水が汚れてしまいます。生き物を弱らせないように気を付けなければいけません」
カブトガニとトビハゼの水槽も担当している竹山さん。さらにクラゲの水槽を主任飼育員の三田圭一さん(33歳)さんから奪取。繁殖も成功させて通年展示ができるようにした。
仕事を奪われた形の三田さんも黙ってはいない。もともとは個人的な趣味であった両生・爬虫類の飼育と展示を提案。現在では、「まったりうむ」という休憩スペースでの人気コーナーとなっている。緊張感の高い単独制多担当持ちが新分野の開拓につながったケースだ。
館長の小林さん以上にトヨタ車が大好きで、機械いじりにも興味がある竹山さん。副館長の戸舘さんに教えてもらいながら、ボイラーやクーラーなどの設備管理も担当している。さらに、飼育員のシフト作りなどの「雑務」も担う。
「僕はショーがあるカピバラやアシカを世話しているわけではないので、どの時間に何をやるのかを自分で決めることができます。ただし、生き物は早めに見てあげなくてはいけないので、朝は7時頃に出社して掃除や水替えなどをするのが普通です。設備は壊れていない限りは空き時間に見れば十分。1日のうちに一通りの作業ができるように考えながら動いているつもりです。小林さんには、午前中に作業を終わらせて、午後は企画展の準備やPOP書きなどの創意工夫に充てるように言われています」
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