安価なカメラをドライバーのスマホに接続し、ドライブレコーダーとして使えるシステムを、イスラエルの企業Nexarが米国で提供している。一般的なドライブレコーダーとして使えるだけでなく、事故の際にはスマホのタッチひとつで自動車保険会社に事故の状況などを通知し、保険金請求までワンストップで行える仕組みを作り上げた。
しかしNexarが目指すのは単なる便利なドライブレコーダーではない。それぞれのスマホから“今”の交通状況を取得し、それをクラウド側で処理することで、都市の交通状況をリアルタイムで把握できる仕組みを作り上げるのが最終的な狙いだ。
「リアルタイムのネットワークを世界のために作ろうとしている。航空管制塔のようなものだ。管制塔がある前は飛行機の事故が定期的に生じていた。道路が直面している課題は、(航空機よりも)はるかに大きい。米国だけでも2億4000万台の自動車が走り、道路は600万マイルに及ぶ。レーダーひとつでは管理できない」(Nexarのエラン・シールCEO)
Nexarを搭載したそれぞれの自動車が、あたかもプローブカーのように分散型センサーとして交通状況を取得する。得られたデータを統合することで、交通管理を最適化できるとシールCEOは話す。
交通状況データをリアルタイムで共有することで、工事などの交通規制情報や突発的な事故による渋滞などの情報も各車に提供できるようになる。「例えば1台の車が急ブレーキを踏んだら、後ろの車にリアルタイムで通知する。あと34秒で信号が青になりますよ、もうすぐ信号が赤になるので減速したほうがいいですよ、と通知することもできる」(シールCEO)
こうした道路の情報は、これまで簡単には取得できず、非常にコストがかかることが問題だった。Googleのストリートビューは有名だが、カメラを付けた専用車が撮影しているため、情報の鮮度を維持するのは難しく、都市部であっても情報が1年前ということも多い。ドライバー自身に撮影してもらい、ドライバーのスマホから情報をアップロードしてもらうことで、低コストで道路情報を構築しようというのがNexarの挑戦だ。自動車自体のレーダーやカメラを使って同様の情報を取得できる可能性もあるが、「自動車に新機能が搭載されるのを待つことなく、1カ月でネットワークを作ることができる」(シールCEO)というスピードも特徴だ。
「2019年の目標は、25万台のカメラを自動車に設置し、10億マイル分の動画を獲得すること。そうすれば(米国の)国土の全容を把握できるようになる」(シールCEO)
撮影したデータはAIを活用している。エッジ側であるドライバーのスマホでは、映像をそのままアップロードするのではなく、事故や道路工事などをスマホ側のAIで判別し注目すべき出来事が起きたときだけアップロードを行うため、データ転送量に対する影響は限定的だ。さらにクラウド側では、数多くの道路の情報を元に機械学習を行い、判別の精度を上げている。「1500万以上の事件、衝突、ニアミス、信号無視した横断者などをデータとして持っている。高度なAIを活用しシステムをトレーニングして能力を向上させている」(シールCEO)。
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