パン作りを決意した阪上氏だが、パンに関しては素人同然だった。そこで、自身が経営するバイキング店で店長をしていた中井裕之氏にパンの製法を学ばせることにした。
中井氏が修行している間、阪上氏はパン店のオープンに向けて準備をしていたが、壁にぶつかってしまう。「新参者」に対して業界関係者が原料となるバターやパンを焼く機械をなかなか売ってくれなかったのだ。結局はトラック運転手時代の知り合いのつてを頼ることで調達先を見つけたのだが、阪上氏は「狭い業界、新規参入の噂はすぐ広がる。既存店のどこかが『あそこには卸すな』といえば、業者としては逆らえないのだろう」と分析している。
原料や機械を調達した阪上氏はパン作りにまい進し、1号店のオープンにこぎつける。オープン当初は値段の高さや知名度の低さから、売れない日々が続いたが、コツコツと営業活動をして徐々にお客の支持を得ていった。
阪上氏はよく「『生』ってなに?」「火を通してないの?」という質問をお客から受けるという。そのたびに、「いえいえ。『生』といいますのは、そのまま食べてもおいしくて、耳までふんわり口どけの良いパン、という意味なんですよ」と回答していると本書で明かしている。
本書を読むと、新規事業を立ち上げ、軌道に乗せるまでには血のにじむような苦労があったのだとしみじみ思わされる。しかし、だからこそ成功したときの達成感も大きいのだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング