まずやるべきは1400にも散らばっている水道事業をまとめる。そして、東日本や西日本というエリアごとに運営をしていく中で、コストや安全性をかんがみながら、他国の失敗事例を精査して、「民営化」という選択を検討しなくてはいけない。
一言で言えば、どちらも順番が逆なのだ。
日本人はよくも悪くも「ムラ」の秩序を大切にする。そのため、「自治体の水道利権」や「生産性の悪い中小事業者」という構造的な問題も、見て見ぬふりをしてきた。
そんな面倒臭い話に手を突っ込むと、仕事を奪われて困る人がたくさんいる――。その一言で黙りこくり、ひたすらこの問題を次世代に先送りしてきた。
政治家はもっと露骨で、地方の公務員も中小企業も「票田」なので、彼らの権益を守るしかない。そこにメスを入れるといいだすと、すさまじい反撃に合うのは、橋下徹氏を見れば明らかだ。
だが、その問題先送りがいよいよ限界に差し掛かってきた。そこでひねり出したウルトラCが、「外国人」だ。
留学生や技能実習生のように「奴隷」をさらに増やせば、生産性の悪い中小企業は変わることなく「延命」できる。同様に、水道も民営化すれば、豊富な日本の水資源を狙って外資が上陸してくれるので、自治体は血の流れる改革をせず問題を丸投げできる、と踏んでいるのだ。
要は、自分たちで手を突っ込むことができない難問を、「外国人労働者」や「外国企業」というよそ者をスケープゴートにして押し付ける。どっかの大企業の外国人が手のひら返しで犯罪者にされる構図もそうだ。
日本人は無意識だが、世界ではそういうメンタリティを「島国根性」と呼ぶ。まずはそろそろ、「困った時の外人頼み」はやめにしないか。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで200件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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