水道民営化にさまざまな問題があるのは紛れもない事実だが、では公営にしておけば低料金も安全も守られてメデタシメデタシ、かというとそんな甘っちょろい話でもない。むしろ、現在の惨状を招いたのは「公営」であって、このままいけば日本の水道代は間違いなくドカンと跳ね上がって不正も続発、遅かれ早かれ水の安全が脅かされる。
何を根拠にと思うかもしれないが、前回の教訓だ。先ほど述べたように水道管の寿命は40年。ということで、60年代にも今より深刻な「クライシス」が到来している。
『大都市は軒並み豊水断水 ボロボロの排水管 財政難で進まぬ工事』(読売新聞 1960年7月29日)
こんなニュースが溢れ、日本の至るところで無差別テロのように水道管が破裂。疲弊した現場のモラルも壊れていった。
例えば1969年、横浜市水道局職員が水道法違反で逮捕されている。これは市衛生研究所から水質に問題があると指摘されるも、給水停止をしないで幼稚園などに大腸菌が含まれた水を垂れ流したからだ。
不正を招くのは「企業のもうけ主義」だけではない。財務省や文科省でスキャンダルが続発したことからも分かるように、「危機」に直面した公務員というのは、「保身」や「組織の理論」でうそや不正を重ねていく。
「水道クライシス」に立ち向かうという点においては、「民」も「公」もダメダメだ。ダメ同士でどんなに罵(ののし)り合っても、明るい未来が生まれないことは言うまでもない。
じゃあ、結局のところどうすればいいのか。厳しい現実を直視すれば、まずすべきは「統合」しかないのは明らかだ。
「は?」という方も多いと思うので順を追って説明しよう。
全国の水道事業の3割が水道収入だけで経費をまかなえないので、自治体が税金を投入してどうにか回している。そんなもん生活必需品だから当然だと開き直る人も多いだろうが、この「無理」のしわ寄せが、自治体間の「水道料金格差」となって現れている。
普通に生活をしていると、隣町の水道料金など気にならないだろうが、実は水道料金というのは自治体の財源や、浄水施設、水源の有無、権利などによってバラつきがあって、地域によっては数倍の「格差」が生じている。
平成26年度の総務省の調査によると、料金が最も低い兵庫県赤穂市では10立方メートル当たり367円だったが、最も高い群馬県長野原町は同3510円と10倍近くの開きがあり、この格差は徐々に広がっている。要するに、民営化うんぬんの前に「料金高騰」はとっくに始まっているのだ。
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