宇宙旅行はもう目前? 18年の宇宙ビジネスを一気に総括!宇宙ビジネスの新潮流(3/3 ページ)

» 2018年12月22日 06時00分 公開
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リスクマネーの流入とベンチャー数の拡大

 18年3月に安倍晋三首相が宇宙ビジネス支援パッケージを発表。その中の目玉施策として、今後5年間に官民合わせて1000億円のリスクマネーを宇宙ビジネスに投資することが語られるなど、年明けから勢いがついた。同発表は世界的にも話題となり、他国の関係者から筆者も質問を受けることが多かった。

 こうした施策も要因となり18年も宇宙ベンチャーに対する投資は引き続き加速した。筆者が代表を務める一般社団法人SPACETIDEの調査では、日本の宇宙ベンチャーによる資金調達は16年に48億円、17年に204億円、18年は10月までに102億円となっており、現在約30社の宇宙ベンチャーが存在している。来年以降も継続的に拡大していくことが期待される。

日本の宇宙ベンチャーがNASAプログラム採択

 日本の宇宙ベンチャー業界をリードしてきたトップランナーにおいて具体的な事業開発(顧客開拓)で成果が出始めた。その典型例が商業宇宙資源開発を目指すispaceだ。HAKUTOプロジェクトの運営母体として著名な同社は、11月に米Charles Stark Draper研究所との協業枠組みを通して、NASA(米航空宇宙局)のプログラムに採択された。

日本の宇宙ビジネスをリードしてきたispace(出典:同社サイト) 日本の宇宙ビジネスをリードしてきたispace(出典:同社サイト

 同プログラムは19年から新たに開始される、民間企業による月面への輸送サービス(Commercial Lunar Payload Services)であり、総予算は10年間で26億ドルと巨額だ。実際の輸送回数やペイロードなどは未定であるが、約1.8兆円の予算を持つNASAの枠組みに日本のベンチャー企業が入り込んだ意義は非常に大きい。

JAXAによる産業振興策

 JAXA(宇宙航空研究開発機構)は今年度から始まった第4次中期計画において「宇宙利用拡大と産業振興」を柱の1つに掲げていて、そのための具体的な施策として、5月に立ち上ったのが「宇宙イノベーションパートナーシップ(通称:J-SPARC)」だ(関連記事:JAXA×宇宙ビジネス、世界初の共創プログラムとは?)。

 従来の商業化はJAXAがサービスを開発し、後に民間企業に移管する「ステップ論」であったが、J-SPARCでは民間とJAXAが「イコールパートナー」として当初より事業化を見据えて共創していく。既にメルカリR4D、ANAホールディングス、ワンテーブル、SpaceBD、Spacewalkerなどが同プログラムを通じてJAXAと協業中であり、今後の展開に期待が高まる。

 このように、さまざまな方面で進展のあった18年の宇宙ビジネス。19年はどのような1年になるのだろうか?

著者プロフィール

石田 真康(MASAYASU ISHIDA)

A.T. カーニー株式会社 プリンシパル

ハイテク・IT業界、自動車業界などを中心に、15年のコンサルティング経験。東京大学工学部卒。内閣府 宇宙政策委員会 宇宙民生利用部会 委員。日本初の民間宇宙ビジネスカンファレンスを主催する一般社団法人SPACETIDE共同創業者 兼 代表理事。日本発の民間月面無人探査を目指すチーム「HAKUTO(ハクト)」のプロボノメンバー。著書に「宇宙ビジネス入門 Newspace革命の全貌」(日経BP社)。

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