「南青山の児相反対派」をボコボコに叩く、そんな風潮がよくない理由スピン経済の歩き方(4/6 ページ)

» 2018年12月25日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

児相のネガイメージに引きずられている

 では、なぜこうなってしまうのかというと、多くの日本人がひと昔前の児相のネガイメージに引きずられているからだ。

 既に多くのメディアが触れ回っているのでご存じだと思うが、児相を利用する子どもや親が、近隣住民に危害を与えることなどない。周辺の土地価格が落ちたなんてケースもない。そういう意味では、南青山の反対派住民の主張は根も葉もない「妄想」なわけだが、30年くらい前まではそうとも言い難い。

 というのも、戦前から1980年くらいまでは、児相で子どもが職員に暴力を振るって「脱走」する事件がちょいちょい発生しているからだ。

 例えば、1981年、埼玉県中央児童相談所の事務所で仕事をしていた職員がモップを持った少年に襲われた。「続いで12歳から17歳の少女を含む7人が侵入、内かぎをかけて少年3人がイスなどで殴った」(読売新聞 1981年11月21日)結果、8人の少年が児相から逃げ出した。

 1973年には、新宿区の都児童相談所から10歳と9歳が脱走。その後、盗みを繰り返して最終的には盗んだクルマでドライブを楽しんだ。警察に補導された子どもたちは「退屈なので自動車を盗んで乗っていた。100キロもスピードが出たよ」(読売新聞 1973年9月5日)と反省の色ゼロだったという。

 断っておくが、「児相にはこういう問題行動をする子どもがいる」などと言いたいわけではない。当時は「校内暴力」などが吹き荒れた時代であり、2018年の「触法少年」(14歳未満で刑罰法令に触れる行為をした少年)とは考え方も行動もまったく違う。

 ただ、過去にはこういう「事件」があったのは、紛れもない事実だ。児相や一時保護所に漠然とした不安を感じている方たちは、このような時代に拡散された「ネガイメージ」をいまだに引きずっている可能性が高い、と申し上げているのだ。

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