現在ブームの渦中にある「食パン」も、この流れに当てはまる。13年、東京・銀座に食パン専門店「セントル ザ・ベーカリー」がオープンし、行列ができる人気店になった。同年、大阪では「乃が美」も誕生している。また、セブン-イレブンのヒット商品「金の食パン」が発売されたのも13年だった。どれも、素材や製法を工夫した高級食パンだ。
「コッペパン専門店もそうですが、昔から日本にあるパン、しかも1種類だけでお店ができる。乃が美のように、パンのプロパーではなく、外からやってきた人が成功する例もあります」。材料や製法を模索し、昨日までみんなが知らなかった味を「発見する」。それによって、個性豊かなパンが生まれているのだ。
「テレビで報じられるような『フェスに何万人来た』『食パン専門店に大行列』といった、目に見える現象でブームを認識する人は多いでしょう。ですが、そのような現象は、ブームのごく一部にすぎないんです」と池田さんは指摘する。
「才能のある人がたくさん出てきて、個性的な店を構える。パン好きの間で話題になる店が増えていく。そして、おいしいパン屋が増えたと実感する。それが、ブームの実態なんだと思います」
パンは単なる主食ではなく、「娯楽」「嗜好品」の意味合いが強くなった。ずっと続いてきた不景気によって消費に使えるお金が限られる中、パンは外食と比べて安く、しかも楽しい。家族で手軽に楽しめる“イベント”になっている。さらに、インターネットでお店や個人が情報を発信することで、さまざまなストーリーが拡散しやすくなった。
また、素材を厳選するパン屋が増えたことで、「地産地消」の方向性も強くなったという。一昔前は「東京進出」がステータスだったが、今はそうではない。「素材ありき」の考え方だという。「地元の素材を使った人気店も増えています。地方にもすごい若手職人がたくさんいますよ」。パンには小麦だけでなく、さまざまな食材を活用できる可能性がある。「パン屋は、地域の新鮮な食材が集まる拠点になれるのです」と池田さんは期待する。
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