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“ニッポン漁業”は成長できるのか?70年ぶりの法改正(3/3 ページ)

» 2019年01月30日 14時15分 公開
[清水仁志ニッセイ基礎研究所]
ニッセイ基礎研究所
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漁業者・企業が一体となり、日本の漁業発展を目指す

 今後、資源管理の徹底に加え、企業参入を促すことで、漁業の生産性向上、養殖業の発展が求められる。しかし、今回の漁業法改正だけで、漁業改革が一気に進むわけではない。

 資源管理の効果は現れるまでに長い時間がかかり、どの程度水産資源の回復につながるかは未知数だ。また、企業参入に対しても地元漁業者の反発は大きい。政府は、漁業権の割り振り方法については、「適切かつ有効に」判断するとしている。既に有用な海域は地元漁業者が使用しており、既得権が優先された場合、企業の参入障壁はそれほど下がらない可能性があるのだ。

 そうした中、日本漁業を成長産業につなげるためには、地元漁業者・企業それぞれが持つ強みを生かすことが重要だ。具体的には、漁業者の高齢化が進み後継者難が深刻になる中、企業は人材、資本、販路などを提供できる。一方、企業にとっては、今まで参入できなかった漁業のノウハウは乏しく、地元漁業者から学ぶことは多いはずだ。今まで地元で培われてきた技術を企業が吸収することができれば、日本の漁業は発展できる可能性がある。

 日本は、領海と排他的経済水域を合わせた面積では世界6位という水産資源に恵まれた国であり、漁業は日本が打って出られる分野の1つだ。今回の漁業法の改正は、漁業改革の第一歩に過ぎない。

 当事者である漁業者・企業が手を取り合うことが日本漁業を成長産業につなげるために重要なことではないだろうか。

著者プロフィール

清水仁志(しみず ひとし)

ニッセイ基礎研究所 総合政策研究部 研究員・経済研究部兼任

研究・専門分野:日本経済


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