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» 2019年02月07日 06時30分 公開

“いま”が分かるビジネス塾:どれほど深刻? 厚労省不正統計問題を「超」分かりやすく解説 (2/3)

[加谷珪一,ITmedia]

勝手にサンプル調査に変更し、補正も行わず

 今回の不正の根幹部分は、本来、全数調査すべきところをサンプル調査にして、それを補正せずに放置したことである。サンプル調査は一般的であり、サンプル調査を行ったからといって、それだけでデータがおかしくなるわけではない。例えば、1000件を調査する際に200件だけをサンプル調査した場合には、得られた数字に5をかけるという補正作業を行えば、1000件の調査に近い数字が得られる。

 不正が見つかった調査は、全数調査が義務付けられているので、サンプル調査に変更した段階でルール違反だが、数字がおかしくなったのは、上記の補正作業を忘れていたからである。1000件分の数字が必要なところが、200件分の数値しかなかったということなので、出てきた賃金の数字は実際よりも低くなってしまった。

 このミスは2004年からずっと続いていたので、十数年間、賃金が低く算出されていたことになる。だが、問題はこれだけにとどまらない。一連のミスが発覚した場合には、通常であれば、04年までさかのぼって、すべてのデータを補正するのが正しい訂正方法になる。

 ところが、厚労省はこうした訂正を行わず、18年以降のデータだけを訂正するという意味不明の対応を行った。このため、18年からは急激に賃金が上昇したように見えてしまった。この訂正作業は、麻生太郎財務大臣による統計批判がきっかけだったとも言われており、これが政権に対する「忖度」であると批判される原因になっている。

 18年以降だけの訂正にとどめた本当の理由は、作業を行った当事者しか知り得ないので、現時点では何とも言えない。04年からすべてのデータを訂正するのは膨大な作業なので、これを回避することだったとも考えられるし、政権に対して忖度した可能性も同様にあり得るといってよい(これに加えて18年から調査対象の事業所を入れ換えたことも、賃金がより上昇したように見える原因となっていた。一部の専門家はこれも忖度であると批判している)。

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