そうやってグローバルカーになったハイラックスは、アジアで物流の担い手になり、第三世界では戦車代わりの役目まで果たしている。30年前にはリビアの戦車旅団を、チャドが重武装したトヨタのピックアップトラック部隊で迎え撃ち、壊滅させ、「トヨタ戦争」とまで言われた。軍事転用の善悪はともかく、極限状態での信頼性において飛び抜けたクルマである証明にはなろう。
国内商用車のサイズで作られた最後のハイラックス。このモデルを最後に13年間国内販売が中断した
さて、そうやってグローバルカーになったハイラックスに、置き去りにされた日本のユーザーの中には、代替車の不在に困った人たちがいた。働くクルマのユーザーである。主に林業を営む人たちにとって、林道で木材を運び下ろせるハイラックスの存在はかけがえがないものだった。北海道を中心に、日本全国で9000台の旧型車両が稼働していて、代替えに足るクルマがない状態におかれていた。
07年、北海道のディーラーから要望を突きつけられた当時の豊田章男副社長が「なんとかする」と約束したところからハイラックス復活計画はスタートする。
途中、リーマンショックや北米の訴訟問題などで2度の頓挫を経て、一昨年ハイラックスは国内で再度販売されることになった。もちろん改めて国内専用小型モデルを設計できるはずもなく、タイからの輸入である。
IMV構想でグローバルカーとして再出発したモデル。国内販売が行われていなかったため馴染みは薄いだろう
ところが、予約を取ってみると、困り果てていたはずのプロユースの人たちの買い替えはたった23台に過ぎなかった。話が違う。しかしクルマが全く売れなかったかと言えばそうではなく、予約全数は2300台に達し、当初の年販目標台数2000台を予約だけでクリアして予想外のヒットとなった。
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