今回、筆者はさなげアドベンチャーフィールド(愛知県豊田市)の専用オフロードコースでハイラックスを試乗した。撮影の都合でコースの途中にクルマを降りて写真を撮ろうとすると、徒歩での上り下りに苦労するような厳しい傾斜で、穴の底は前日の雨が溜まった泥濘路なのだが、ハイラックスは上りも下りも平然とこなす。普通のクルマを普通に運転できる能力さえあれば、なんのテクニックも必要ない。2駆と4駆を切り替えるスイッチと、ダウンヒルアシストコントロール(DAC)のスイッチさえ覚えれば、あとはクルマがやってくれる。というか、4駆にさえしておけば、わざわざDACなんて使わなくても、普通の人がクルマで走る気になるような場所ならアクセルとブレーキでなんなく走破できてしまう。
あるいはプロのドライバーが、深く掘った穴にわざと前輪を落とし、ド新車のハイラックスのフロントバンパーをガリガリと地面に擦り付け、傷だらけにしながら穴から脱出するのを見た。強烈な性能だと思う。
日本では少なくとも公道にこんな道はない。もちろん林道の一部にはそういう場所もあろうが、本来そこは無届けで走って良い場所ではない。山は法律だけでなく入会権だの何だのととても複雑なのだ。中には正当に走行する権利を有する人もいるのだろうが、恐らくこの記事を読んでいる人のほとんどはハイラックスがフルに性能を発揮するような道路を走ることはないだろう。そういう意味ではこれはある種のスーパーカーなのかもしれない。
時速300キロ出せるクルマはお金さえあれば買えるだろうが、国内はもちろん、今や世界を見渡してもそんな速度を出して良い道は希少だ。だからと言って、そういうクルマの意味がないわけではない。
世界にはハイラックスでなくてはダメな状況はまだまだたくさんあって、そこでは本当に命がけでモノを運んでいる人たちがいる。
わが国でのハイラックスの半分はファッションとしてのクルマだろう。しかしもう半分は世界の悪路を走破する性能を持つスーパーカーとしての憧れで支えられていくのだろう。
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。
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