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» 2019年02月18日 06時30分 公開

スバルよ変われ池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/4 ページ)

[池田直渡,ITmedia]

スバルの中の昭和

 ではその中心は何だと言えば、吉永泰之前社長が、記者会見で発言した「昭和の会社」という言葉に集約されていると思う。これから「スバルの中にある昭和なもの」について書いていきたい。

 さて、話は冒頭の雪上試乗会に戻る。試乗会に先立って行われたプレゼンテーションで説明されるのは、いつものスバルのスローガン「安心と愉しさ」だ。

 資料の始まりは「安心と愉しさをお客様に提供し、笑顔をつくる」に始まる。それを受けて「原点は航空機メーカーのDNAを持つからこそ可能な『人を中心としたクルマづくり』」へつながっていく。さらに問題なのはそこからの飛躍だ。次の説明は「スバルのコア技術 SYMMETRICAL AWD」。

 筆者はこれに大いに疑問がある。スバルがしつこいほど繰り返す「安心と愉しさ」とは何なのだ? その内容も明確に定義されていなければ、それをどう構築するかの道筋も示されていない。「航空機メーカー」という出自に頼って説明もせずに信じろというのか? それは「俺の目を見ろ」とどう違うのか?

 安心と愉しさをどう定義して、何を実現しようとして、その実現手段としてこれこれのエンジニアリングになったと話は進むべきではないか? 「SYMMETRICAL AWD」は何かを実現するためのエンジニアリング的手段であって、それ自体は目的ではない。

 腹が立った人がいたら申し訳ないが、そういう人こそよく考えて欲しい。かつての富士重工の名エンジニア、百瀬晋六が「スバル1000」を設計した時、彼には実現したい理想のクルマの姿があったはずだ。それを実現するために彼は水平対向エンジンを選び、FFというレイアウトを選んだ。それこそが正しい順番であり、「水平対向エンジンとAWDがスバル」であるという定義は本末転倒だ。それは前出の吉永前社長がインタビューでハッキリ言っていたはずだ。「スバルらしさはエンジンだと思われることが当社にとって一番マズイ」と。

 吉永前社長はこうも言った。「ポルシェを見習いたい」。それは本当に正しい。ご存じのようにポルシェのカイエンはフォルクスワーゲンのトゥアレグの、マカンはアウディQ5の兄弟車だ。シャシーもエンジンもポルシェ製ではない。それでもユーザーは喜んでエクストラコストを払い。ポルシェを所有した満足を得ている。エンジニアリングの構成要素が何であろうと、そこに「ポルシェの走りとは何か?」がちゃんとあるからだ。少なくとも「フラット6+RRこそがポルシェ」という構図にはなっていないのだ。問題はスバルらしい走りとは何かという定義である。

 スバルは彼らが掲げる「安全と愉しさ」をきちんと分析し、明らかにして、その上でロジカルなエンジニアリングがどう構成されていったかを明確にすべきだと思う。

 一例を挙げよう。スバルはドライバーの視野をとても重視し、死角を少しでも減らすエンジニアリングを徹底している。折りに触れてそれを誇らし気に説明する。確かに真面目だし熱心だし、それそのものは間違いではない。

 だが、階層を1つ上げたらどうだろうか? 「ドライバーの視野はなぜ大事なのか?」。運転とは3つの段階で行われる。「認知」「判断」「操作」だ。これはもう絶対に揺らがない定理だ。視界が大事なのは「認知」が大切だからだ。だとすればその「認知」にかかわる全てが大事なはずだ。視界が良好なことは1つも間違っていないが、他の「認知」も同じように重要だ。

 しかし、スバルの計器類はナビも含めると3カ所に散らばって配置される。そしてそれは整合が取れていない。例えば、センターコンソールの最下段に設けられた空調コントロールダイヤルを操作すると、最上部、ダッシュボード上に設けられたサブメーターに突然温度表示が表れる。これは「認知を大事にしたロジック」だと言えるだろうか?

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