平均にもいろいろある あなたが本当に求めたいのは?算術に加重……(2/3 ページ)

» 2019年02月18日 15時39分 公開
[篠原拓也ニッセイ基礎研究所]
ニッセイ基礎研究所

 次に、速さや濃度や圧力といった、何かを何かで割り算して得られる比について、平均を求めることを考えてみよう。

 ここでは、小学生向けの時間・距離・速さの問題が有名だ。家から学校まで1.5kmの距離を、徒歩で往復するとしよう。行きは時速5km、帰りは時速3kmで歩いたとすると、往復で平均の速さはどれくらいだっただろうか。ここで慌てて算術平均をとり、時速4kmと答えてはいけない。まず、往復にかかった時間を考えてみる。1.5kmを、時速5km、3kmで割り算する。行きは0.3時間、帰りは0.5時間かかったことになる。つまり、往復で3kmの距離を、0.8時間かけて歩いたことになるから、3kmを0.8時間で割り算して、平均の速さは、時速3.75kmとなる。これは「調和平均」と呼ばれる。

 実は、距離が1.5kmでなくて、どんな長さであっても、調和平均は変わらない。調和平均を割り算で求めるときに、往復の距離3km(割られる数)と、往復の時間0.8時間(割る数)は、ともに片道の距離1.5kmによって決まる。このため、割り算をすると、互いに打ち消し合うのだ。

 さらに、あるデータを取ったときに、各データの算術平均からのかい離がどれくらいあるかという、データのブレについて平均をとることを考えてみよう。ブレの平均をとるときには、算術平均ではうまくいかない。例えば、身長が1.6、1.7、1.8mのAさん、Bさん、Cさんの3人について、ブレの平均を考えてみよう。この3人の平均身長は1.7mなので、ブレは、Aさんはマイナス0.1m、Bさんはプラスマイナス0m、Cさんはプラス0.1mとなる。このブレの算術平均をとると0mとなる。

 しかし、これでは3人の身長がいずれも1.7mでブレがない場合と同じ結果になってしまう。そこで、ブレを二乗したものの算術平均をとり、その平方根をとる。この例では、ブレの二乗の算術平均は0.00666……〈=((マイナス0.1m)の二乗+0mの二乗+0.1mの二乗)÷3〉。その平方根は、約0.082mとなる。これは「二乗平均平方根」と呼ばれる。統計学などで、よく目にするものだ。

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