テレビの「CMまたぎ」がなくなる日 “減らして効果を上げる”奇策とは世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)

» 2019年02月21日 07時30分 公開
[山田敏弘ITmedia]

新しい指標で「視聴率」も変える

 実は、米国ではすでにプライム・ポッドが始まっている。18年9月24日、NBCテレビのゴールデンタイムの人気オーディション番組「ザ・ヴォイス」で初めてこのスタイルでの放送が行われた。最初のCMは映画「ファースト・マン」の宣伝だった。

 NBCはこの放送に手応えを感じたようだ。事実、放送後の調査によれば、プライム・ポッドによってCMに対する好感度が38%も向上した。さらに、流される広告の数が少ないため、より視聴者の記憶に残りやすいことも分かり、「商品」をネット検索する視聴者の数は39%も増えたという。

 さらにNBCでは、従来の視聴率に頼り切りにならないように、もっと踏み込んだ視聴率を計算する方針を打ち出している。日本でも、視聴習慣の変化によって、タイムシフト視聴率(録画したものを7日以内に再生した数)を出すようになっている。NBCはさらにそれをネット配信などのさまざまなプラットフォームにまで拡大し、視聴するメディアやデバイスを超えて評価する指標「CFlight」の導入をすでに開始。19年にはさらにCFlightへの移行を進めたいとしている。

 そうしたデータを基にして、視聴者をさらに絞ることができ、広告主が今以上にピンポイントなプライム・ポッドCMを流せるようになるという。

photo テレビ番組の視聴率を表す指標も大きく変わるかもしれない

 このフォーマットは、特に映画配給会社や自動車メーカー、通信やテクノロジー系企業が関心を示していると、米広告業界誌のアドウィークは分析している。同社によれば、この新しいCMフォーマットはかなり注目されており、すでに80%のスポットが売れていると言われている。今後、NBC傘下のケーブル局などにも広げられていくことになるようだ。

 米テレビ業界で新たな取り組みを先導しているNBCは、19年、ゴールデンタイムの50番組でプライム・ポッドを導入する方針だ。ネット時代のテレビCMに新たなスタンダードを構築しようともくろんでいる。

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