完璧な人間はいない――。だが、仕事も私生活も充実させ、鮮やかにキャリアを築く「女性リーダー」は確実に増えてきた。企業社会の第一線で活躍する女性たちの素顔に迫り、「女性活躍」のリアルを探る。
大きな組織でリーダーになる人にはどんな共通点があるのか。「社内政治が上手な人だ」などと決めつけるのは出世していない人のやっかみにすぎないと思う。特に競争が激しい業界は、社内の人間関係だけで出世できるほど甘くはない。周囲を巻き込んで結果を出す実力が求められる。
キリンエコー株式会社は、キリンホールディングスの100%子会社であり、キリングループ企業従業員向けに保険商品の提案をしたり、ビールの副産物を飼料として販売したりしている。1941年に創業した伝統ある会社だ。
2016年、女性で初めての社長に就任したのは丸山千種さん。1986年に施行された男女雇用機会均等法の「第1期生」であり、キリンビールで初の女性営業職でもある。全てが「初めて」の分野を切り拓(ひら)いてきた丸山さんはどんな実力を秘めた人物なのだろうか。東京・中野にあるキリングループ本社でインタビューをした。
――キリンビールに新卒入社をした頃のことから教えてください。どんな時代だったのでしょうか。
一般企業に入るには短大卒のほうが圧倒的に有利だった時代です。募集がたくさんありましたから。もしくは、進学はせずに地元の高校で一番の成績を取ったほうが就職しやすいといわれていました。
私が成蹊大学(東京・吉祥寺)を受験したのは地元を離れて東京に住んでみたかったことが一番の理由です。父親からは「現役で行けるならいいけれど浪人するのはダメだよ」と言われました。
今では信じられないかもしれませんが、当時は25歳までに結婚しなくてはいけないという風潮だったのです。20歳で卒業する短大と比べると、大学は卒業してから時間がありません。1年でも卒業が遅れると結婚しにくくなると心配したのでしょう。
――非婚化・晩婚化が指摘される30年後の現在とは大違いですね。丸山さんは大企業に総合職として就職する道を選びました。いわゆるキャリア志向だったのでしょうか。
大学院に進むことも考えていたくらい、就職についてはボンヤリとしていましたね。でも、「どうせ社会に出るならば一斉に就職活動をするタイミングがいいのかな」と思い、友達に誘われて大学の就職セミナーに参加しました。
いろんな会社の人が大学に来て説明会をしている中で、キリンビールの人だけは仕事のことを幸せそうに語っていました。他の会社の人は「土日もなく働いていて大変」という厳しい話が多かったのですが、キリンビールの人は「仕事は楽しいし、仲間とビールも飲める」と終始にこやかだったのです。いい人が多い会社なのかな、と思って入社試験を受けることにしました。この期待は入社後も裏切られずに今に至ります。
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