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男女雇用機会均等法の「第1期生」 キリンで子会社社長に上り詰めた女性に学ぶ仕事術パーフェクトウーマン 女性が拓く新時代(2/5 ページ)

» 2019年03月14日 05時00分 公開
[大宮冬洋ITmedia]

居場所がなかった営業職

――ビールの営業職というと男性の仕事というイメージが強いです。苦労しましたか?

phot ビールの営業職をしていたものの最初は居場所がなかった(ラガー)

 最初は居場所がありませんでした。当時は量販店ではなく街の酒屋さんがメインのお客さんだったのですが、上司の営業担当者とペアで活動していた私はまったく相手にされません。男性の同期はどんどん仕事を任されているので置いてけぼりです。

 「少しでもいいので私だけの担当をください」と上司にかけ合って、担当を持たせてもらいました。でも、やっぱり相手にされない。私がお店を訪問しても世間話だけで、新しい飲食店がオープンするといった重要な仕事話は私を飛び越して上司に電話で話されてしまったり。悔しい思いをしました。

 でも、同じ酒屋さんに半年ほど定期訪問を繰り返していたら、ある日急に社長が出てきてくれたことがあります。それまではパートの人に伝言するだけだったのですが、諦めずに通い続けていたことを見ていてくれたのですね。それからは一気に信頼を得ることができました。

 他の店でも同じようなことがありました。その店は他社のビールをメインに取り扱っているお店でした。私は先入観を持たずに通い続け、冷蔵庫の陳列は他社の商品も含めてキレイに直していました。そのお店の役に立つことが大事だと思っていたからです。

 あるときに「今度の日曜日に商店街の朝市がある。手伝いに来ないか」と誘っていただきました。喜んで手伝わせてもらったら、社長の家族の朝ご飯の場にも呼んでもらい、その後、社長から「キリンの自販機を入れようと思っている」と言われたのです。ビックリしました。自動販売機は常に多くの在庫が必要なので、導入することによってそのお店でのシェアが大幅に増加することになるからです。

 社長にとっては大きな決断で、(キリンの自販機を入れることを)「ご先祖に報告しなくてはいけない」とおっしゃっていました。なぜそんな決断をしてくれたのかと伺ったら、「正月に寝ていたら、あなたが夢枕に立って自動販売機を入れるようにお願いしたから」と言われました(笑)。

――生きているのに夢枕に立つなんてすごいですね。まねしにくい営業手法です(笑)。まねしやすい営業のコツがあれば教えてください。

 やはり積み重ねが欠かせません。相手のためになることを考えて継続していけば、いつか信頼を寄せてもらえます。

 もう一つは、相手と自分との間に垣根を作らないこと。礼儀は守らなければなりませんが、素直にぶつかることは大切だと思います。

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