同じことがAIの領域でも進行している。「AIは、ほかの近代的なイノベーション、ロボット、VR、ドローンなどとは違うものだ。計算コストが下がることで、AIが行う予測コストが下がる」とアグラワル氏は話す。
計算コストの低下は、写真を化学の問題から計算の問題に変えた。AIが行う「予測」でも同じだ。「より多くの問題を予測の問題にしていく、ということが起きる」(アグラワル氏)
その代表例が自動運転だ。もともとの自動運転の研究は、しっかり管理された工場などで、「『もし』障害物があったら曲がる」というように、「もし」に対する行動をプログラムすることで進んできた。ところが、すべての「もし」に対応することはできない。
「街中には無限の『もし』がある。プログラマを何人雇っても、すべての『もし』に対応するコードを書くことはできない。でもこれを、予測の問題に変えることができたらどうか? 人間の運転手だったら何をやるか? という予測の問題になる」(アグラワル氏)
AIが自動運転にブレイクスルーをもたらすとされているのは、これが理由だ。人間だったらどう運転するかをAIが予測することで、その精度を上げていく。
「人間の運転を見ながら、AIが予測する。予測が人間の行動と同じだったら、その予測を強化する。違っていたら、予測モデルをアップデートする。AIは自動翻訳の場合でもルールを学ばず、予測する。こういう英語が出てきたら、日本語ではこうだろうと」(アグラワル氏)
AIが行えることが「予測」であることを理解すれば、AI活用のための共通原則もシンプルだ。「もっと予測を使うこと、もう一つはこれまで予測の問題でなかったものを予測の問題にすること」(アグラワル氏)
人事領域もAIを活用できる分野の1つだ。人事担当者は「人間の感情を扱う仕事だから、AIは不要だ」と主張するかもしれないが、これも予測の問題に置き換えられる。
「AIの多くのプロジェクトがフォーカスしているのは、人事の問題を予測の問題にシフトすることだ。採用や昇進なども予測の対象になる。囲い込みやリテンションも予測の問題だ。AI活用のカギは、かつては予測の問題でなかったものを、どうやって予測問題にシフトさせられるかにある」(アグラワル氏)
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