「変」の哲学で成長 名古屋発「世界の山ちゃん」の絶妙な名付けと看板の戦略長浜淳之介のトレンドアンテナ:(2/6 ページ)

» 2019年04月16日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

「世界の山ちゃん」以外の飲食店も経営

 エスワイフードの年商は78億円(2018年8月期)、資本金9900万円、従業員数1470人(正社員170人、アルバイト1300人)となっている。順調に行けば、今期は80億円を超えていくだろう。

 世界の山ちゃんは同社の主力業態で、主たる顧客層は30〜50代のサラリーマン。顧客単価は2500〜2600円となっている。100席を少し切るくらいの規模の店が多く、大きく看板が出せない場所には出店しない。

 この他に愛知県内でラーメン「やどがり屋」2店、創業店を復刻した「串かつ・やきとり やまちゃん」、新業態の飲茶「世界のやむちゃん」など計7店が展開されている。

 世界のやむちゃんの屋号は、世界の山ちゃんと語感が似ているという理由で採用されており、「変」の哲学の実践例だ。名古屋に飲茶の店がないことから企画された店で、店の内装も台湾の裏町や路地が再現されて凝っている。滑り出し順調で、第2の柱となるかどうか、注目されるところだ。

海上自衛隊の調理班で働いた創業者

 創業は1981年。創業者の故・山本重雄氏が、名古屋市中区新栄で開業した。山本氏は高校卒業時に「料理人に進むか」「警察官のような国を守る仕事に就くのか」という選択に迷った。海上自衛隊の調理班なら両方できるとアドバイスする人がいて、その忠言に従い自衛隊に入隊した。

 調理班でキャリアを積み、お店を経営して1億円をためて金利で生活することを夢見て退官。当時の銀行の金利は、今と違って8%くらいあったのだ。居酒屋で3年間修業し、24歳で起業した。

 最初はカウンターだけの小さな店で焼き鳥と串かつをメインで売っていた。串かつは大阪風の1口サイズではなくて、岡崎の八丁みそを使ったみそだれ(土手煮の煮汁)にドボンと漬けた名古屋の串かつであり、串に巻いた豚肉を揚げていた。

photo みそ串かつ

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