駅で見かける“青い看板” 靴修理職人が極める「おもてなし術」の秘密全国315店「ミスターミニット」(1/4 ページ)

» 2019年04月17日 07時00分 公開
[加納由希絵ITmedia]

 急いで歩いていて、つい、靴のかかとやつま先を溝に引っ掛けて破ってしまった……。お気に入りの靴なのに、かかとがすり減ってボロボロ……。

 多くの人が、そういった経験をしたことがあるだろう。そんなとき、毎日通る駅の構内や街角に強い味方がいる。靴やかばんなどの修理に応じてくれる職人たちだ。

 その中でも、「ミスターミニット」の青い看板を駅などでよく目にする。ミニット・アジア・パシフィックが展開するミスターミニットは、修理サービスチェーンの代表的な存在だ。1957年にベルギーのブリュッセルで生まれ、72年に日本上陸。今では、日本国内に315店舗を展開している。

 靴修理や靴磨きのほか、かばん修理、合鍵作成、時計の電池交換、はんこ作成、スマートフォンの画面修理など、多彩な修理サービスを提供する(店舗によって内容は異なる)。来店客の要望を聞き、スピーディーに修理を行う職人たちは、どのように技術を身に付けているのか。実際に店舗に行って見せてもらった。

photo ミスターミニット日本橋本店(東京都中央区)で勤務する石田浩之さん

靴のヒールを修理してもらう

 「いらっしゃいませ!」という元気な声と、靴修理用の機械が動くウィーンという音、そして、カンカンと金づちを打つ音――。ビジネス街にある路面店、ミスターミニット日本橋本町店(東京都中央区)では、接客や修理作業で忙しく動く社員たちの姿があった。

 話を聞いたのは、同店の責任者を務める石田浩之さん(33)。お客さんと話しているときは物腰が柔らかい感じだが、修理作業に向き合っているときは真剣なまなざしだ。所狭しと並べられている機械やこまごまとした器具を駆使して、テキパキと作業をする。

 実際に、記者が履いていたパンプスを修理してもらった。履きつぶしてヒール部分がすり減っていた。かかとのゴムの部分を交換してくれるという。石田さんは、慣れた手つきですり減ったゴムを止めているくぎを抜き、ペンチでゴムをはがす。その部分に接着剤を塗って、大きめのラバーを貼る。そして、もう一度くぎを打った後、ラバーの余分なところを機械で削れば完成だ。両足で5分ほど、あっという間にきれいなかかとになった。

photophoto すり減った靴のかかとをはがし、大きめのラバーを取り付ける(クリックで拡大)
photophoto 機械で余分なところを削って完成(クリックで拡大)

 ヒールの修理は石田さんの得意分野だという。「先輩に仕込まれました。お客さまからご指摘をいただかないような仕上がりにできます」と自信をのぞかせる。どのように技術を習得していったのか。そこには、技術の習得だけではない、修理サービス特有の奥深さがあった。

       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.