駅で見かける“青い看板” 靴修理職人が極める「おもてなし術」の秘密全国315店「ミスターミニット」(2/4 ページ)

» 2019年04月17日 07時00分 公開
[加納由希絵ITmedia]

大手小売業から“導かれるように”転身

 石田さんが入社したのは2016年9月。大手小売企業の社員から転身したという。ずいぶんと思い切った転職に見えるが、そのきっかけは、ミニット・アジア・パシフィック代表取締役社長の迫俊亮氏の存在を知ったことだった。

 「前職では縦社会の組織で、30代になっても若手扱いでした。一方で、同い年の迫社長がすでに経営者として会社を引っ張っている。そのことに刺激を受けました。お店をよく使っていたこともあって、自然とミスターミニットに気持ちが向くようになりました」

 その後、ミスターミニットの職人の募集に対して「導かれるように」履歴書を書いた。他の企業は受けるつもりはなかった。会社への興味と「やってみたい」という気持ちに背中を押され、入社に至ったという。

photo 入社後はくぎ打ちの練習から始めた

 入社後は、技術の習得に励んだ。まずはくぎ打ちの練習を繰り返し、ハンマーの使い方を体に染み込ませる。靴磨きの練習にも取り組んだ。しかし、修理サービスの難しさと大切さを一番実感したのは手を動かす業務ではなかった。それは「接客」だ。

 石田さんの前職の小売店舗と比べると、来店客数は格段に少ない。最初は「少ないな」と気楽に感じたが、すぐに修理サービスならではの接客の難しさを実感したという。「レジを打つ接客とは全く違う。お客さまがカウンターまでいらっしゃってからが大事なんです。最初は戸惑いました」

 どういうことだろうか。修理サービスの場合は、来店して実際に会話をするまで、相手が何を求めているのか分からない。何を修理したいのか、今すぐに直して使いたいのか、それともこちらに預けてくれるのか。「会話を積み重ねないと、本当に満足してもらえるサービスが提供できないのです」

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