石田さんのそんな姿勢のよりどころとなっているのが、同社が社内で掲げる「ビジョンミッション」だ。その一つに、「メニューにない依頼が来たら腕の見せどころ」という言葉があるという。
実際に石田さんも、メニューにない依頼に対応したことがある。それは、「革のジャンパーを磨いてほしい」という依頼だ。メニューにはない作業だったが、「クリーニングではダメ。職人に磨いてほしい」と熱心に頼まれたという。そこで、その依頼を引き受け、クリーナーを使って丁寧にジャンパーを磨いた。「そのお客さまは、めちゃくちゃ喜んでくれました」と、石田さんは振り返る。「できる、できないという結果よりも、誠意を見せられるかどうかを意識しています」
過去にはある店舗で、メニューにはなかった「靴磨き」を自主的に始めた社員もいたという。その後、靴磨きは正式にメニューに加えられることになった。
もちろん、修理後にお客さんがあまり納得していない様子だったり、苦手な作業があったりと、悔しい思いをすることもある。それでもやりがいを持って仕事ができているのは、“うれしい瞬間”があるからだ。石田さんにとってその瞬間は、修理したものを大切に使ってくれている姿を見ることだという。
「あるとき、若い女性がお母さまの形見のバッグの修理に来られました。内側はもうボロボロの状態で、修理には時間もお金もかかりそうだったのですが、それでも納得して依頼していただき、修理をしました。お渡ししてからしばらくしたころ、そのバッグを持って来店されて、今度は靴の修理を依頼していただきました。修理したものを実際に使ってくださっているのを見ると、『やってよかった』と実感するんです」
今後は、社内の店長資格に当たる「ショップマネージャー」を取得し、さらに技術とおもてなしを磨いていくことが目標だ。「現在、フランチャイズを拡大しているので、その業務に携わるチャンスがあれば、挑戦したいですね。そのためにも、キャリアを積み重ねていきたいと思います」
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