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「キャッシュレス大国」中国の実相――“信用経済”の深い影割り勘、お布施、災害義援金の支払いまで(3/4 ページ)

» 2019年04月22日 06時45分 公開
[西村友作ITmedia]

令和元年は「キャッシュレス元年」へ

 また、19年10月に予定されている消費増税に伴う景気の落ち込み対策として、キャッシュレス決済時のポイント還元も予定されている。「平成」が終わり新元号となった19年は、後に「キャッシュレス元年」「モバイル決済元年」と呼ばれるようになるかもしれない。

 中国ではこのモバイル決済の普及が起点となり、それまで想像もしなかったようなサービスが相次いで開発され、社会が劇的な変化を遂げた。いま日本でも、スマホのアプリを通じたモバイル決済は徐々に広まりつつあるが、この点では中国がはるかに先行している。いち早く「新経済」が発展し、キャッシュレス国家へと変貌しつつある中国の現状を知ることで、今後、日本の社会や経済がどのように変わっていくのかを占うことができるだろう。

 本書ではこの「中国新経済」について、データ分析やケーススタディーだけにとどまらず、読者がより身近に感じられるよう、北京で実際に生活する私自身の実体験や友人・知人の話など、リアルな現場の情報を織り交ぜながら分かりやすく解説する。

 第1章では、「新経済」エコシステムの中核を担う「決済」の発展の過程を紹介する。中国でなぜ「オンライン決済」が普及したのか、スマホの登場によって国内決済市場の勢力図がどのように変化し、スマホを使ったモバイル決済がどのように利用されているのかをみていく。

 第2章では、モバイル決済というプラットフォーム上に、ダイナミックに広がる「新経済」のエコシステムについて、中国人の生活に欠かせない「買う」「食べる」「移動する」「遊ぶ」の4つの視点から、具体的なサービス名や内容、マーケット状況などの情報を交えながら紹介する。財布を持ちあるく必要がなくなった中国人のリアルな生活状況が分かるはずだ。

 第3章では、中国で「新経済」が発展してきた背景を説明する。中国政府は「イノベーション駆動型の経済成長」の実現に向け、その原資となる「ヒト」「モノ」「カネ」が集まる政策を積極的に推し進めている。そして、それをチャンスと捉えリスクを恐れず起業にチャレンジする人材が、実際にイノベーションを生み出している。また、中国国内に山積する「社会問題」にビジネスチャンスがあり、そこでイノベーションが起こっているという社会的構造についても解説する。

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