第4章のキーワードは「信用」である。「新経済」は、経済活動において最も信用が必要とされる「決済」が基盤となっており、プラットフォーム企業には多くの信用情報が集まる。それをスコア化し利用者の囲い込みに利用している現状について、アリババの実際の取り組みを例にみていく。一方で、信用社会の実現を目指す中国政府は、これら民間企業が集めた信用情報を利用し始めている。「新経済」がビジネスの枠組みを飛び出し、社会システムの基盤となりつつある現状を紹介する。
最終章では、世界第2位の経済大国となった中国と、日本が「新経済」という新しいビジネスにおいて、どのような協力関係を結べるのかを考察している。本書は単純な中国礼賛本ではない。「新経済」は中国社会をどのように変えたのか、そしてどこに向かっているのか。「光」の部分のみにとどまらず、その「影」の部分も指摘する。
中国では新しいビジネスが数多く誕生しているが、それは裏を返せば、他国に代わって壮大な社会実験を行っているとも言える。そのため成功ばかりでなく、失敗するケースも少なくない。最近では、かつてもてはやされたシェア自転車が、規制強化や労働コストの上昇を背景に退潮傾向にある。また、キャッシュレスが進んだことで新たな手法の犯罪が横行。銀行などではリストラが始まっている。スマホを利用した料理のデリバリー・サービスが急成長しているが、それに伴い配達員の乗る電動バイクの事故や料理を入れるプラスチックごみの大量廃棄といった新しい課題もみられるようになってきた。
今の中国で実際に起こっているこうした現象から、われわれ日本人が学ぶ意義は大きい。本書が「中国新経済」に対する理解を深め、これからの日本がどのような未来を選択していくべきかを考える一助となれば幸甚である。
西村友作(にしむら ゆうさく)
1974年熊本県生まれ。2010年に中国の経済金融系重点大学である対外経済貿易大学で経済学博士号取得後、日本人としては初めて同大専任講師として正規採用される。同副教授を経て、2018年より現職。日本銀行北京事務所客員研究員。専門は中国経済・金融。
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