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» 2019年05月09日 08時00分 公開

強力なマネジャーの下で働く経験は“逆効果”?:リーダーが育つプロジェクトに欠かせない10の原則 (2/3)

[白川克,ITmedia]

原則4:FACILITATION(ファシリテーション)

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 プロジェクトを立ち上げるとなると、どこの会社でも「では、集まって相談しましょう」――という流れになる。しかし、皆のスケジュールを合わせると、打ち合わせができるのは2週間後だったりすることもしばしばだ。そこに手ぶらで集まって「さて、どうしましょうか?」と話しはじめているうちに、あっという間に2時間くらいたってしまう。何が決まったのかよく分からないけど、次回、打ち合わせはまた2週間後に――。こんなありさまでは、何カ月たってもプロジェクトは進まない。

 プロジェクトは意思決定の連続体である。何をプロジェクトのゴールにするのかを決め、やっつけるべき課題を特定し、そのための施策を選択する。施策が絞られた後も、「どう変化させるのか(一気に変えるのか、徐々に変えるのか)」だとか、「その施策を実行するために投資するかしないか」など、次々と意思決定の必要に迫られる。

 意思決定は会議で行うので、プロジェクトのスピードと品質は、会議のスピードと品質とほぼ同じになる。従って、会議のスピードと品質には徹底してこだわるべきだし、会議開催のテンポにも工夫をこらす必要がある。プロジェクトに集った全員のオピニオンを引き出すのもファシリテーターの腕次第。出そろったオピニオンの違いを考えたり、優劣を議論したり、1つの方針としてまとめるのも、もちろんファシリテーターの能力によって大きく変わってくる。

 育つプロジェクトでは、まず、会議の技術をたたき込む。どんなタイプの変革であれ、それが成否の鍵を握っているからだ。そして全員がファシリテーションを学んだチームでは、一人のファシリテーターだけが奮闘するチームよりも、さらにスピーディーに質の高い検討ができ、変革はどんどん進むようになる。

原則5:PROCESS(プロセス)

 変革プロジェクトでのリーダーシップを期待されても、「この業務は経験ないから……」「よく知らないから……」「ITの専門家ではないので、デジタル変革と言われましても……」などと、たじろぐ人がいる。だが、業務経験や業務知識と「変革をリードする力」は分けて考えたほうが良い。経験や知識は、知っている人を連れてくれば補填できる。そして新しいことにチャレンジするのだから、経験者だって正解を知っているわけではない。

 もっと重要で、今の日本企業に本当に足りないのは、「変革プロジェクトを前にすすめるプロセスを構築する力」である。プロジェクトのゴールを皆で見いだすためにはどのような順番で議論していけばよいのか? 筋の良い施策を選択し、メンバー全員で納得するためにはどんな表を作ったら助けになるのか? 社内の誰に相談し、誰の承認を早めに取れば、スムーズに社員が協力してくれるのか?

 つまり、コンテンツよりもプロセスに熟達し、組織を動かし、現実のビジネスを変えることが求められている。DX(デジタルトランスフォーメーション:ITの浸透によって人々の生活をよりよい方向に変化させること)とは、単にITを買ってくることではなく、新しいテクノロジーをテコにして組織やビジネスを変えることだからだ。そういったプロセスをリードする能力は、知識(コンテンツ)に比べて、社外から買ってくるのが難しい。

 重要なのは、「変革のプロセスを組み立てるリーダーは社内でまかなう」という強い意志を持つことだ。

原則6:OPEN(オープン)

 ほとんど全ての企業が、「セクショナリズムの壁」に苦しんでおり、部門をまたぐ課題を解決するのに苦労している。その理由の一つは、部門間で情報を共有するのが難しいからだ。ここでいう情報とは、仕事をする上で必要なハードの情報(在庫数や商品スペックなど)だけではなく、ソフトな情報(何を目指しているのか、何に困っているのか)みたいなことも含めた情報を指している。

 つまり、部門最適から抜け出し、顧客に一貫した体験をしてもらう組織になるとか、全社最適なコスト構造になるためには、部門の垣根をなくし、もっともっと情報をオープンにして、ソフトな情報を交換しあう必要がある。ファシリテーションはそのための技術でもある。

 もう一つ、ここでいうOPENには「思ったことを本音で語り合う」という意味も含んでいる。プロジェクトは手探りで進むのだから、「この進め方で良いのかモヤモヤする」「あの課題を放置していると、リスクがいつか顕在化するのでは?」といった懸念を互いに共有し合うことは、プロジェクトを安全に進める上では死活的に重要である。

 そもそもプロジェクトとは、これまでの経歴や現在の立場が異なるメンバー同士が集うことが多く、建前だけを話していても一向に前に進まない。たとえ見かけ上、進んでいるように見えても、後から矛盾が噴出して頓挫してしまうことだってある。

 部門の代表者として建前論を並べるのではなく、プロジェクトにとって何がベストか? 会社にとって何がベストか? だけを考えれば良い場を作り、思ったことを口にできる場を作る――。その方がクリエイティブになれるし、気を使わないから楽だし、何より楽しいし、結局プロジェクトは成功する。そうした伸びやかな場で、人は育つ。

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