インタビュー
» 2019年05月10日 11時18分 公開

いかにしてトップに上り詰めたのか:シングルマザーだった私が“ニューヨークの朝食の女王”になるまで――「サラベス」創業者に聞く (3/4)

[武田信晃,ITmedia]

後継者が見つからなければ店を閉じる

 飲食業、とくに料理人は、営業時間だけでなく、仕込みなどの準備をする必要があるため、基本的に拘束時間が長い。まして、サラベスさんのレストランは朝食で名をはせたことから、朝がとても早いのだ。「今でも毎日、午前3時か4時には起床して、それから14時間は働きます。成功するにはそれだけ一生懸命働くしかないのです」。

 「サラベスさんは仕事と家庭を両立させる『Work Peace Balance』を心掛けていると聞きましたが、現実的にはバランスを保てているのですか?」と聞くと、「No(いいえ)!!!」と答えた。その時は筆者も含め、周囲にいた全員が爆笑した。サラベスさんが仕事に対して、たゆまぬ努力を続けることができる源泉は、やはり自分の仕事を愛しているからなのだ。「Love(愛)」と「Passion(情熱)」という言葉を、インタビュー中に彼女は何度も口にした。

 ウィリアムさんは「彼女は米国では有名人です。向こうでセレブシェフとなると、スタッフに調理を任せて厨房に立たない人が多いのです。サラベスのお店のキッチンはガラス張りなのですが、客は彼女が厨房に立って料理しているのを実際に見ることができます。それが信頼を勝ち取ることにもつながっています」と付け加えた。

photo 夫のウィリアムさん

 「好きこそ物の上手なれ」ということわざがあるが、サラベスさんはそれを地で行くケースで、女性がキャリアを形成する上で多くのヒントを垣間見ることができる。サラベスさん自身も「シングルマザーとして生きていくためには、好きなことを見つけることと、諦めないことが何よりも大切です」と話した。飲食業で成功を収めた人は、幼いころから料理を作ることが好きだったり得意だったりした人たちばかりだと思ってしまいそうだが、サラベスさんは「小さい頃は(作ることではなく)食べることが好きでした(笑)」と笑う。つまり成人してから好きになった分野であっても、十分に可能性があるということなのだ。

 サラベスさんと夫のウィリアムさんは75歳を超えているから、日本ではいわゆる「後期高齢者」である。しかし、実際に会ってみると、年齢を全く感じさせないほど精力的に働いている。高齢化した経営者の責務の一つは、自身の後継者を考えることだと言ってもいいだろう。まして、創業者が「カリスマ経営者」であれば、2代目というのは非常に難しいポジションになる。サラベスさんに後継者について聞いてみると、まだ具体的には決めていないそうだ。

 「情熱がある人、私と同じビジョンを持っている人に継いでもらいたいと考えています。間違った人を選んで失敗した例を知っています。そうでないのなら店を閉じることを覚悟しています。サラベスというレストランやブランドを築くのに38年かかりましたから、お客さまにはいいイメージのまま、いつまでも心に残ってほしいのです」(サラベスさん)。

photo レジの横で売られていたクッキーなど
photo クラシックエッグベネディクト&フラッフィー (WDI JAPAN提供)

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