大阪が誇る「スーパー玉出」 毎日「1円セール」をしてももうけが出る仕組みに迫る長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/5 ページ)

» 2019年05月14日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

個人営業の八百屋からスタート

 スーパー玉出は食品を主に扱うスーパーマーケットであるにもかかわらず、どうしてパチンコ店のように見えてしまうのか。それは、もともとパチンコ店だった店舗を購入して、ギンギラギンの装飾をそのまま残し、居抜きで使ったからである。

 前田氏は個人営業の八百屋としてスタートした。その店が繁盛して事業資金がたまっていく中で、個人営業のスーパーとなっていった。そして、売りに出された同業で個人営業のスーパーを次々と買収するなどして、チェーン化を進めていった。チェーン化した店では、パチンコ店風の空間づくりをしていった。パチンコ店のネオンサインをつくっている職人が、店内のネオンサインを手掛けている。

 当時は商店街の全盛期で、大阪では数多くの商店街が立ち上がり、大いににぎわっていた。

 今では半ばシャッター街と化した商店街が増えてしまったが、特に西成区はアーケード商店街の密集地で、鶴見橋、サンスーク花園、今池、萩之茶屋本通、玉出本通などといった商店街が隆盛を誇っていた。スーパー玉出はその勢いに乗った。これらの商店街は人があふれていたのだ。

客単価が平均の半分近く

 スーパー玉出は、大阪の下町に密着した昭和の商店街全盛時の繁栄と熱気を今に伝える庶民派のスーパーだ。一般のスーパーが客単価2000〜2500円であるのに対して、1000〜1500円と半額近くとなっている。

 その代わり、毎日買物に来る顧客が多く、コンビニに近い感覚で当日使う食材を買っていく。郊外にある駐車場が広いスーパーなら1週間に1度、駅前のスーパーでも2〜3日に1度くらいの来店頻度だから、顧客の購入スタイルに特色がある。

 地域の人たちがなんとなく毎日集まってくる、コミュニティーのような性格を持っているのだ。

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