関東圏の私鉄は「特急大競争」時代に突入した 各社の考え方乗りたい・行きたい(3/4 ページ)

» 2019年05月28日 08時00分 公開
[小林拓矢ITmedia]

東武「リバティ」は利便性の向上に力を入れる

 一方、東武特急はかつてデラックスなイメージに満ちていた。日光や鬼怒川温泉まで直行し、シートもJR特急のグリーン車並みで、列車によっては車内サービスが存在している。だがそんな東武特急も、変わりつつある。

 17年に登場した500系「リバティ」は、これまでの「スペーシア」や「りょうもう」と比較して、汎用性を高めた車両である。3両1ユニットで、分割・併合も可能であり、編成の短さゆえ、野岩鉄道や会津鉄道に乗り入れることもできる。

2017年に登場した500系「リバティ」(出典:東武鉄道)

 野岩鉄道は奥会津と日光エリアをダイレクトに結ぶことを目的とした路線であり、そのエリアから東京都内に直通したいという考えももちろんあった。かつては浅草から会津田島に直通する急行や快速もあった。これらの列車が特急化されたのが、いまの「リバティ会津」である。もともとは固定クロスシートの列車だったものが、リクライニングシートの車両になり、快適性を大きく向上させた。

 浅草〜会津田島間は、浅草〜東武日光間よりも距離は長く、それでいて長時間乗車し続けるにはちょっときつい車両が使用されていた。おそらく、鬼怒川温泉や下今市で「スペーシア」に乗り換えていた人も多かったと思われる。

 これまでの日光・鬼怒川温泉方面の特急は快適性が高かったものの、利便性という観点では、場合によっては行き先により直前の下今市で乗り換えが必要だった。このあたりを解決しようとしたのが、「リバティ」である。下今市での分割・併合により、日光・鬼怒川温泉それぞれに向かう人にとって便利になり、奥会津観光や、奥会津エリアから都心へのビジネス利用にも役立っている。

 東武伊勢崎線方面にもビジネス向け特急が走っている。館林・太田・赤城方面に向かう列車である。こちらは6両固定編成の特急が中心である(一部に「リバティ」が使用されている)ものの、汎用性の高さから考えれば「リバティ」タイプの車両を投入してもいいかもしれない(特に増発の際には)。

 さらに「リバティ」は、「アーバンパークライナー」などの通勤向け特急にも使用され、分割・併合ができるというメリットを最大限に生かしている。

 一方で東武特急は、10年以上前から新宿からのJR直通列車なども運行し、日光や鬼怒川温泉エリアへの観光客の誘致にも力を入れている。

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