ソニーは6月12日、機械学習を使った予測分析ソフトウェア「Prediction One」の提供を開始した。ソニーグループ各社で、ダイレクトマーケティングやシフト配置、CRMなどに活用していたものを、外部の法人に提供するものだ。当面は無料とする。
予測分析は、過去の実績から将来の結果を予測する手法の1つ。Prediction Oneは機械学習やプログラミングなどの専門知識がなくても、画面に沿って操作できるのが特徴の1つ。「数クリックで簡単に予測分析」とうたう。
「予測分析は、ビジネスにおける天気予報のようなもの。今日傘を持っていくかどうかを天気予報を元に決めるように、例えば営業なら、100人の見込み客のそれぞれの成約確率を出すことで、どこから電話をかけるかを決められる」(ソニーR&Dセンター統合技術開発第2部門知的アプリケーション技術開発部の高松慎吾氏)
使い方は極めて簡単だ。学習用の元となるデータを表形式で用意し、Prediction Oneに読み込ませる。あとは、データの列から予測したい項目を選択すれば、10種類程度の機械学習のモデルにデータを当てはめ、最も精度の高いものが自動的に選択される。一度学習したモデルができてしまえば、予測をかけたいデータを読み込ませると、予測結果が確率として表示される。ここまで数クリックで済む。
データのイメージは、顧客ID、登録日、住所、企業規模、受注結果といったもの。このデータを使い、受注結果を予測対象としてモデルを生成すれば、次からは顧客ID、登録日、住所、企業規模のデータを入れると、受注確率が表示されるようになる。
不動産売買の営業現場で、見込み客の優先順位付けに活用しているSREホールディングスでは、顧客リストの洗い出しにかかる時間の削減も大きいと話す。「精度は人間の勘よりも高い。これまで現場のメンバーが対応する顧客の抽出をやっていたが、その時間がなくなったことが大きい。月に500分かけて1000人の顧客から抽出していたが、それが13分になり、8時間の作業削減ができた」(SRE AI Partnersの角田智弘氏)
単に確率が表示されるだけでなく、どの要素が確率に影響を与えたかをビジュアルで表示するのも特徴だ。この予測結果の理由が提示されるため、関係者への説明がしやすく、どんなデータが重要なのかという理解にもつながる。
今回、クラウドでの提供ではなく、敢えてWindows PCで動作するソフトウェアの形で提供する。「顧客データや業績データなどを、社外のクラウドに転送するのは問題がある場合がある。またデータアップロードの待ち時間もない」(高松氏)
数百件程度のデータであれば、数分でモデル選択や学習は完了する。ソフトウェア自体は最大100万行、200カラムのデータに対応するが、その場合でも一般的なPCで半日程度で学習が行えるという。
「機械学習を使った予測分析は、いままで難しいツールだった。使いこなしているのはITリテラシーが高い人やデータサイエンティスト。これが誰でも使える時代がやってくる。その第一弾」と、ソニーネットワークコミュニケーションズの渡辺潤執行役員は話した。
本ソフトは法人向けだが、登録フォームへの情報入力だけでダウンロードでき、企業内個人や個人事業主でも利用できる。
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