入り口でSuicaをかざし店舗に入る。店内には飲料や菓子などが並んでおり、棚から自由に商品を取って出口に向かう。出口のディスプレイには商品の合計金額が表示され、改札のようにSuicaをかざすと電子マネーで支払いが済んで終わり。こんな店舗の実証実験が、東京都北区の赤羽駅ホームで始まる。
JR東日本がJR東日本スタートアップと共同で、無人決済店舗の実証実験として行うもの。サインポストが開発したAI(人工知能)無人決済システム「スーパーワンダーレジ」を利用する。営業期間は10月17日から2ヶ月程度。
JRグループが今回の実証実験に期待することは、人手不足への対応と、採算性が厳しくなっているキヨスクの再生だ。無人化することで人件費がかからないため、これまで採算が取れないため店舗を作れなかった場所でも運営が可能になる。「新聞雑誌、タバコの売上が減っている。コンビニが競合となっていて店舗としての採算性が難しくなっている。そうしたキオスクの再生の象徴になる」(JR東日本スタートアップの柴田裕社長)
同システムでは、購買履歴に加えて性別や年齢などの詳細なマーケティングデータを得ることが技術的には可能だ。ただし今回のシステムでは、個人情報の扱いなどに配慮して、決済終了後に認識データは削除する仕組みにしている。
実際に体験してみると、利便性も高い。レジで各商品のバーコードを読み取るのは、結構長い待ち時間だということを実感できる。「入ってから出るまで10秒くらいで済むことを目指している」(JR東日本スタートアップの阿久津智紀マネージャー)
前回大宮駅で行った実証実験では、店舗に1人しか入ることができず、一度取った商品を棚に戻すと認識できなかった。今回は、同時に3人まで入店できるほか、2つの商品を同時に取ったり、棚に戻したり、棚の奥から取ったりしても認識できるようシステムを改良した。
システムとしては、天井に複数個設置されたカメラで人物と商品を認識し、どの人物がどの商品を取ったかを認識する仕組み。商品を事前に個別学習させることで認識させるAI技術を用いている。
「商品をカバンに入れても認識する。普通のセルフレジと比べても防犯性は高い」。前回の実証実験では、親子連れが同時に店舗に入り、各々が商品を手に取って出口に向かうこともあったという。そんな場合でも、システムは親子それぞれを認識、誰がどの商品を取ったかを把握した上で、出口に同時に入ればまとめて精算できるように作られている。今回の実証実験でも、入場は3人までとしているが実際は親子連れなど3組(Suica3枚)が入場可能だ。システム的には3人以上でも認識して対応できるという。
ただし人数が増えるほど認識率は落ちるため、そういった点ではさらなる改良が必要だ。JR東日本では実用化のスケジュールには言及しておらず、「無人AIレジを進めることを考えるとまだスタート地点」と言うにとどめている。人手不足への対応、また店舗の採算性の改善、さらにショッピング体験の向上という点でも早期の実用化を期待したい店舗だった。
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