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ローソンが無人決済「スマホペイ」を導入 その狙いとキャッシュレス戦略を聞くモバイル決済の裏側を聞く(1/2 ページ)

» 2018年06月19日 06時00分 公開

 コンビニ大手のローソンが「ローソンスマホペイ」の実証実験を行っている。2018年4月23日から5月31日まで、同本社のあるゲートシティ大崎店、晴海トリトンスクエア店、大井店の都内3店舗で一般利用者を対象にしたものだ。

 スマートフォンにローソンアプリをインストールし、作成したアカウントでログインすれば、店内で商品のバーコードをスマートフォンで読み取るだけでレジに並ばずに決済できる。実証実験開始初日には晴海トリトンスクエア店にて報道関係者向けのお披露目会も行われ、実際の決済までのフローを弊誌でもレポートしている。

ローソン 商品のバーコードをスマホで読み取ってセルフ決済できる「スマホペイ」

 レジのないコンビニといえば、世界的には中国の上海などで展開されている無人コンビニや簡易コンビニの他、米ワシントン州シアトルに開設されたAmazon Goが知られているが、ここ最近、日本国内でも実験的な店舗が増えつつある。ローソンのスマホペイもその1つで、行列に並ばずに手持ちのスマートフォンだけで会計を済ませて退店できるのは非常に斬新な体験だ。今回はその狙いについて、同社マーケティング本部プロモーション部シニアマネジャーの白井明子氏に話をうかがった。

先行した上海のシステムを日本風にアレンジ

ローソン ローソンの白井明子氏

 新しい決済システムというと相当な準備期間があるような気がしてくるが、ローソンスマホペイの場合はわずか半年〜1年近く前から先行していた上海のローソン店舗を参考にする形で導入までの道筋がつけられた。上海の店舗でもテストから全店導入に至る過程があったが、出張で何度も現地を訪問していた白井氏は一連の流れをみて、日本でもサービスを展開するべきではないかと考え、プロジェクトがスタートしたという。

 当初は上海側のマーケティング担当である吉田氏との連携でスタートし、後に一部署だけでは解決しない段階になったところで「無人決済」のプロジェクトが立ち上がり、運営やITなどの部署から20人くらいが週1回ペースで集まって稼働にこぎ着けたという。ベースがあったとはいえ、この開発サイクルの短さはスマホペイの特徴の1つだろう。

 この手の新しい店舗業態では、よく「無人店舗」という表現が使われる。中国のBingoBoxのような個人認証を組み合わせた自動運営型コンビニが典型だが、無人店舗で人件費がかからないというのがウリの1つになっているように思われる。一方でAmazon Goのように、レジ待ち行列なしで従来のキャッシャーにあたる人員が不要にもかかわらず、大量の店員が店舗内外にいて接客にあたっているようなケースもある。「レジなし≠無人」というわけだ。

 白井氏によれば、スマホペイが目指したのは「無人レジ」で、レジ待ち行列などで入店を諦めていたような人(見込み客)を取り込んで、既存店舗に混雑緩和と客数増加効果を期待しているとのこと。

 「無人店舗も含めて検討を行い、何個かプロトタイプはありましたが、日本ではさまざまな課題を優先付けしていって現在のスマホペイの形になりました。中国では倉庫1個を丸ごとコンビニにするボックス型店舗も多いようですが、スマホペイでは初期開発費用はかかっているものの、他のPOSも含めて仕組みをいじるものに比べれば安価に済んでいる状態です。あとは店舗ごとにタブレットを置くコストだけで、思ったほどお金がかかっていません。もちろん全店展開を目指して改修を進めていくとコスト負担が出てくるという試算もあるが、現状のシステム自体ではそうした問題はありません」(白井氏)

 スマホペイそのものは非常にシンプルな仕組みで、店舗側の商品管理システムと連動できればそれほど展開は難しくないように思える。あとは店舗の位置情報を取得するのに必要なBluetooth Beaconなどの仕組みを備えるだけだろう。全店展開でどのような課題があるのかを白井氏に聞いたところ、「ポイント連動」という答が返ってきた。現在ローソンではPontaとdポイントの2つのポイントプログラムの他、販促を目的した「たまるよスタンプ」のようなキャンペーンを展開している。これら全てをスマホペイの対象にしようとすると、導入に時間がかかるのだという。

「お願いだからやめないで」ヘビーユーザーからの要望

 取材を行ったのは5月中旬のため、一般開放から2週間強でのフィードバックとなるが、評価は上々だという。もともと社員向けに実証実験前からテスト公開していたゲートシティ大崎店は実績が高く、1日あたりの利用件数が数百程度あるという。晴海トリトンスクエア店も成績がよく、この2店に共通するのは「オフィス街の中心にある」という点で、こうした新技術にリテラシーが高いという部分も相性がよかったようだ。

 逆に住宅街の真ん中にある大井店の利用はあまり芳しくなく、異なる環境を持つ3店舗でのテストで、おおよその利用傾向が分かりつつある。最大のポイントは朝夕のラッシュをスマホペイで緩和できる点で、これまで行列を見て入店を諦めていた人が買い物をするようになった。全体に1店舗あたりでまわせる客数も増えており、それに伴って全国平均でみれば店舗実績は売上ともに上昇しているようだ。もともとコンビニは天気などの変動要因が多いため、1日単位での売り上げの単純比較が難しいというが、導入効果が大きいのは確実だろう。

 今回は実証実験の期間があらかじめ明示されているため、社員だけでなく一般のヘビーユーザーからは既に「やめないで」という意見が出ているという。病院店舗など、入れれば確実に昼間の混雑解消に貢献する店舗からは「うちの店にぜひ入れてくれ」という声が挙がっているようだ。

 スマホペイに関して多数の記事が出た関係で、フランチャイズからは「希望店に入れていくと書いてあるが、どこから入れていくのか?」という質問も来ているが、まずは直営店を中心に混雑店を狙っていくという。実験店舗での展開をクローズするのかも含め、ローソンの会計年度で次年度(2019年3月以降)に1000店舗程度をめどにフィードバックを元に展開していく計画だ。

 余談だが、実証実験の話が出てから、ライバル店舗からの視察が毎日訪問していたのだという。毎日必ずスーツ姿の関係者が目撃されていたようで、それだけ同社の同行や新しいサービスに業界が注目しているのだろう。

「万引き」は防げるのか

 無人レジというと、多くの人が気にするのが「万引き」だ。特にローソン方式ではレジを全く通過せずに退店できてしまうため、これを懸念する声がある。だが同社によれば、先行する上海のレポートでもスマホペイ導入後に万引きが増加したという数字は出ておらず、両者に相関関係はないというのが結論のようだ。

 直営店でしかも店舗数を絞った実験だったので、そうしたトラブルがないように店長やスタッフが頑張ったのではないかと白井氏は話すが、周囲の環境がある程度影響するのではないかと筆者は考えている。

 例えば上海の店舗は大都会の街の中心部にあるため、人の目も行き届いて不正行為は起きにくい。今回の実験店舗も同様の条件だが、もちろん全国展開する過程でそうした問題が発生する可能性があることはローソン側でも認めている。また同社によれば、「商品ロス」というのは何も万引きなどの行為だけでなく、搬入された商品の登録時に店員のミスによって紛失する可能性も含まれるとのことで、そうした細かいヒューマンエラーも込みの数字になっているという。

 万引き防止効果という意味では、現在のスマホペイでは決済が完了した後に表示されたQRコードを出入り口のタブレット端末に“スキャン”させて、自身が「既に決済済みですよ」ということを示すフローが含まれている。店員やまわりの人に「不正をしていません」ということをアピールする効果もあるが、同時にQRコードをスキャンさせなくても何も問題はないため、「皆からはいらないという意見が出ている」(白井氏)という。

ローソン 決済完了後に出てくるQRコードを店頭に備え付けられているタブレット端末(iPad)に読み取らせると、ユーザーの操作は完了する

 実際、非常に混在する店舗で回転数を上げるためにはタブレットが不要という話もあり、まだ検討中の段階のようだ。現在出ているアイデアとしては、部外者のあまり入らないような社内専用の「閉鎖商圏」ではタブレットを取り外したり、スマートフォン上で決済を済ませると(マスコットキャラの)あきこちゃんの声で「ありがとうございました」と鳴らせたりといったものがあるという。

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