今日から始めるモバイル決済

なぜいま日本で「QRコード決済」が注目を集めているのか?:鈴木淳也のモバイル決済業界地図(1/3 ページ)

» 2018年03月13日 06時00分 公開

 2月27日、メディア各社の報道で「三菱東京UFJ、三井住友、みずほの国内3メガバンクがQRコード決済で規格統一連携へ」というニュースが話題になった。それによれば、最近ブームとなっているQRコード決済市場への参入にあたり、3行がその規格を統一して必要なシステム投資などを共同で行う新会社設立も検討しているとのこと。この分野ではインターネット事業者からは楽天やLINEが、スタートアップではOrigamiなどの事業者が、そして先日には携帯キャリアからNTTドコモが参入を表明している。

 報道では3行は2019年中のサービスインを目指しているとされるが、同件について三菱東京UFJに問い合わせたところ「話し合いの事実があるのは確かだが、具体的なプランまでは踏み込んでいないのが実情」(同社広報部)との公式回答を得ている。とはいえ、2020年を1つの目標として、関係各所が2018年から2019年にかけてラッシュでこの市場に参入してきているのは確かで。こうした動きを整理しつつ、日本で巻き起こっている「キャッシュレス狂想曲」について考えていきたい。

QRコード決済 スマホ画面に表示したQRコード(またはバーコード)読み取ることで決済が可能になる。写真はドコモが4月に開始予定の「d払い」

なぜいまQRコード決済なのか

 QRコードを決済に使うというアイデアは比較的昔からあり、例えば筆者が把握している範囲でも2013年初頭にMastercardが発表した「MasterPass」というサービスでは、店頭での支払いオプションとしてNFCの代わりにQRコードを採用していた。

 現在ブームの火付け役になっている「Alipay(支付宝)」や「WeChat Pay(微信支付)」が2013年から2014年にかけて中国でローンチしたことを考えれば、大体この時期に実用的なサービスが出現し始めたといえる。WeChat Payなどの場合、小売店舗決済を可能にするアクワイアリングがインターネット事業者にも開放された2013年のタイミングで、既に送金サービス等でQRコードの活用が進んでいたという面も大きいだろう。

QRコード決済 MasterPassアプリの原型となったC-SAM WalletでのQRコード決済のデモ。なお、現在のMasterPassアプリはC-SAMベースではない別物となっている

 米国で小売業者が共通の決済サービス導入に向けて連合を組んだ「Merchant Customer Exchange(MCX)」の発足が2012年だったが、ここで導入された「CurrentC(カレンシー)」というサービスで採用されたのもQRコード方式だ。当時は2010年ごろに盛り上がり始めたモバイルNFCの仕組みに暗雲が漂い始めていた時期であり、モバイル端末へのNFC標準実装があまり進んでいない状態だった。

 そのため、デバイスを選ばずに決済が行えるQRコード方式が選ばれたという背景がある。後の2014年にAppleから「Apple Pay」が発表され、再びNFCに脚光が集まったが、この時期に登場したサービスには「あえてNFCを選ばない」というものが多くあり、当時の状況を勘案したものだと考える。現在もなおAppleがiPhoneのNFC機能を決済向けに開放していない現状を鑑みれば、モバイルOSのプラットフォーマーではない一事業者がサービス展開をするにあたって、QRコード方式というのは対応プラットフォームを増やすうえで重要な選択肢だ。

 とはいえ、日本国内では既にFeliCaインフラが広域展開され、2020年の東京五輪に向けては海外で一般的なEMV Contactlessと呼ばれるType-A/B方式の非接触決済サービスの大手チェーンを中心とした導入が視野に入っている中、「なぜいまQRコード決済なのか」と疑問に思う方は少なくないはずだ。だが潜在するニーズを従来の非接触決済だけでは満たすことができず、この隙間を埋めるべく登場したのがQRコード決済だと筆者は考える。主な理由は以下の通りだ。

  1. (主に中国からの)インバウンド需要への対応
  2. ポイント連動などアプリを使った独自の決済サービスの仕組みを作りやすい
  3. インターネット事業者など新しい参入者にとってハードルが低い
  4. 既存の決済ネットワーク(CAFISなど)を介さずにシステムが構築しやすい
  5. タブレットやスマートフォン、POSにアプリを入れるだけでよいので小売店にとっての導入ハードルが低い

 簡単にまとめれば、「QRコード決済を必要とする買い物客がいる」「(市場トレンドはあるものの)クレジットカード決済導入のための設備投資には慎重(または予算や時間がない)」という2つの差し迫ったニーズがあり、一時的であれ導入の機運が高まっているというわけだ。このあたりについて、もう少し整理していこう。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年10月26日 更新
  1. 「Androidのマイナンバーカード」がスタートするもフル機能対応機種が少ない件 ポイントは「StrongBox」という仕組み (2026年10月24日)
  2. ダイソーで1100円の「USB Type-C to HDMIケーブル」でスマホの画面をテレビに映すとどうなる? 対応機種なら試してみる価値あり (2026年10月24日)
  3. 「iPhone Duo」はLINEもポケモンGOも“黒い”余白だらけ? 日本の定番アプリは未対応が多く (2026年10月23日)
  4. 「Galaxy Z Fold8」「iPhone Duo」を“メイン端末”として使う上での課題 縦型コンテンツの最適化をどう進める? (2026年10月26日)
  5. 進化した「Siri AI」で感じた、iPhoneの操作を一変させる実力 「AI出遅れ」の汚名返上なるか (2026年10月24日)
  6. デジタル庁が「Androidのマイナンバーカード」対応機種を公表 属性証明機能を使える機種は限定的 (2026年10月19日)
  7. iPhone Duoを使って痛感した「Face ID」のありがたさ 充電スタンドに置いたまま通知が見られない不便さに苦しむ (2026年10月24日)
  8. きょう発売の「iPhone Duo」、Apple 表参道でゲットしてきた 早速開封レポート (2026年10月23日)
  9. KDDI、子会社モビコムのモンゴルでの火災について事実関係を公表 「法令違反行為を行っていない」 (2026年10月24日)
  10. ダイソーで330円の「人感・明暗センサーLEDバーライト(Type-C)」が意外と便利 1人暮らしの帰宅時や非常灯に便利  (2026年07月18日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー