#SHIFT

仕事も育児も「嫌なことはやらない」 女性起業家が語る、女性“無理ゲー”時代の攻略法小田桐あさぎさんに聞く(3/5 ページ)

» 2019年06月18日 06時00分 公開
[らいらITmedia]

育児でも嫌なことは全部やめる

―― あさぎさんはワーキングマザーを支援する起業家として活躍される一方、4歳になる娘さんがいらっしゃる母親でもあります。

小田桐 私、子どもはもともと好きではなかったけれども、「人の目があるから作らなきゃいけない」と思っていたんです。暗黒の婚活時代と同じ思考ですね。正直、妊娠が発覚したときは「これで年貢の納めどきかな……」とブルーな気持ちでした。

 そんなネガティブスタートだったので、なるべく苦労しないで子育てできる方法を妊娠中にすごく探したんです。日本で良しとされている子育ては、母親の負担がものすごく大きいことに気付いたので、主に海外での子育て方法などを研究していました。

(写真提供:ゲッティイメージズ)

―― 確かに、日本の親は子どものためにすごく手をかけますよね。

小田桐 私の親世代(今の還暦前後)は専業主婦やパート主婦の割合が今よりも多かったので、それが実現できましたが、フルタイムで同様の家事育児を両立するのは“無理ゲー”です。一方、海外では寝かしつけはせず、「おやすみ」と声をかけてドアを閉めるだけ、赤ちゃんを毎日お風呂に入れずに布で拭くだけ、育児は全てベビーシッターにお任せという場合も少なくありません。

 意外と乳幼児教育の専門家の意見でも、「子どもに構いすぎない育児」の話が多かったので、私自身も研究して実践してみたらすごく楽でした。例えば、海外では、「夜泣きは赤ちゃんの寝言だから、しばらく放置した方がいい」といわれていたりします。それに倣って夜泣きしてもすぐに構わないでいたら、3週間ぐらいで6時間寝るようになりました。ミルクの量も日本は細かく決まっていますが、それも全部無視して赤ちゃんが欲しい分だけあげると、日本の基準の3倍量ぐらいになってしまうのですが、ぐっすり寝ます。生後3カ月には、ベビーシッターを雇って出掛ける日も作りました。

 このように「普通はこういうもの」という固定概念を取っ払い、本当に自分と赤ちゃんに必要な最低限のことだけを考え、それだけをしていたらとても楽でした。

―― ただ、手をかけない育児が楽だと知っていても、「こんなしょぼいお弁当を持たせたら、子どもがからかわれちゃうんじゃないか」などと、周囲の目を気にして行動できない母親もいると思います。そういう女性はどう考え方を転換すればいいでしょうか?

小田桐 私の「理想の男性リスト」と根幹は同じで、そもそも「自分がどんな人生を送りたいのか」をきちんと決めないといけないですよね。それこそキャラ弁を作るのが全然苦痛じゃなく、好きでやっている人もいるわけじゃないですか。その人に逆に「そんな手をかけなくていいのよ!」と言うのも余計なお世話ですよね。

 だから、お弁当作りがつらい人は、まずキャラ弁を作るような人たちは「頑張っている」のではなく「好きでやっているだけ」という事実に気付くことが大事だと思います。私も家事にテンションが上がらなくて、それよりは同世代の女性に会って自分の考えを話したり、講演活動をしたり本を書いたりする方が楽しいからやっているだけですし。

反論、炎上は同世代の女性から

―― そういう突き抜けた育児論をメディアで話されると、反論も来ませんか?

小田桐 昔とある媒体で「好きなときだけする育児」の話をしたら、Twitterで結構炎上しました。「こんな女は子どもを産むべきではない」「だったらなぜ産んだの?」なんて書かれて、それは今でもよく5ちゃんねるとかに載っていますね。

 以前、女性タレントがベビーシッターを雇って夫とデートしている話をテレビでしたら、子育て世代の女性を中心に「子どもがかわいそう」と批判が殺到して炎上したこともありました。親世代や男性からの批判は来ないんですけどね。

―― 本来は仲間であるはずの同世代の女性たちが一番反応するのは意外でした。

小田桐 子どもの考えを常におもんばかって、相手をしてあげて、かつ自分もそれを喜びだと感じていれば理想です。でもそういう人って特殊ですよね。子どもは感情のコントロールができないし、ぶつかり合うことが多い。意思疎通が難しい相手とのコミュニケーションを喜べる人間は実はほんのひと握りで、普通の人は不可能です。

 でも、不可能をやろうとするからイライラして怒鳴ってしまう。怒鳴るのはやらないことより害があるんです。だから手を抜いてニコニコしていた方が断然いいのに、日本の今までの価値観では、できないことを「やれ」と言い続けてきたんですよね。それを変えるのってやっぱり難しいです。子育て世代の女性がその価値観を社会に押し付けられ、我慢して頑張っているから、「好きなときだけする育児」が楽をしているように見えて、「こんなに頑張っているのに!」と反発を覚えてしまうのかもしれません。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.