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» 2019年06月14日 07時30分 公開

誰にも訪れるかもしれない未来:孤独死の現場から問う 独りで誰にも迷惑を掛けず、あなたは死ねるか (1/3)

最近注目が集まる「孤独死」。私たちは独りでも死ねるのか。特殊清掃の現場や遺族のルポを重ねる2人のジャーナリストに問う。

[服部良祐,ITmedia]

 誰もが直視したくない「死」の話題。だが最近、注目が集まっている。住人が孤独死などを遂げた部屋をきれいにする「特殊清掃」という仕事は、テレビドラマや漫画の題材になった。事故物件のデータを集めた大島てるさんの「事故物件公示サイト」も話題だ。

 まるで「怖いもの見たさ」のように注目される特殊清掃や孤独死だが、実は誰にとっても人ごとと言えなくなってきた。近所付き合いや家族のつながりすら希薄になりつつある一方、中高年の引きこもり問題もクローズアップされてきた。孤独死の報道で取り上げられる事例も、決して高齢者だけではなくなってきたという。

 今回対談してもらったのは、葬儀の在り方や高齢者問題などを長年取材してきた、毎日新聞社会部編集委員の瀧野隆浩さんと、孤独死や特殊清掃についてルポしてきたフリージャーナリスト、菅野久美子さんだ。人は「独りで誰にも迷惑を掛けず」死ねるのか。死臭漂う事故物件の特殊清掃や葬式、遺族取材など、死の現実を見つめ続けた2人に聞いた。前後編で送る。

photo 残された遺品やごみを片付ける特殊清掃の現場(瀧野さん提供)

黒い体液、ごみ、ウジ、ペットと共倒れ…… 孤独死の現実

photo 瀧野隆浩(たきの・たかひろ)。毎日新聞社会部編集委員。1960年、長崎県生まれ。防衛大学校卒。社会部記者として宮崎勤事件などを担当。『サンデー毎日』編集次長、本紙夕刊編集次長などを経て現職。自衛隊などに加え家族の病理や高齢者問題を取材。著書に『宮崎勤精神鑑定書』(講談社)、『自衛隊のリアル』(河出書房新社)など。

――瀧野さんは事件担当記者などを長く務めた後、今は葬儀や高齢者問題、人の終末期の在り方について取材しています。菅野さんも特殊清掃の業者に帯同した現場ルポを多く発信しています。孤独死した男性が部屋に残した「私を引取る(原文ママ)人がいません」という書き置き。あるいは、ごみだけでなく遺体から流れた黒い体液、蠅やウジに覆われた特殊清掃の現場。2人の著書では孤独死の現実が生々しく描写されていますが、どんな思いで取材しましたか。

菅野: 孤独死とは「独り死」です。識者の中には「1人で亡くなって早く見つかると良い」といったことを言う人もいますが、そんなきれいなモノじゃない。ごみ屋敷になっていたり、多頭飼いしていたペットと共倒れになった例もあります。孤立して結局亡くなって、何カ月も発見されなかった場合が多い。孤独死そのものは、良いことだとは思いません。

photo 菅野久美子(かんの・くみこ)。フリーライター。1982年宮崎県生まれ。大阪芸術大学卒。出版社の編集者を経て2005年から現職。孤独死や性にまつわる記事を多数執筆。著書に『大島てるが案内人 事故物件めぐりをしてきました』(彩図社)、『孤独死大国 予備軍1000万人時代のリアル』(双葉社)など。

――菅野さんの『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』(毎日新聞出版)では、肉親の孤独死を激しく悔やむ人もいれば、遺体の引き取りを渋るケースも出てきます。

「この親父は臭かったが、死んでも臭かった」

菅野: 生前の関係性が全てですね。「この親父は臭かったが、死んでも臭かった」と笑いだした遺族もいます。孤独死は肉親と死別していたケースに加えて、離婚など家族間で仲が悪かった場合が多いのです。DV(家庭内暴力)で奥さんと疎遠になっていたようなケースですね。(遺族は)良い感情は持っていない。

 一方、孤独死の現場では、数百万円ほどの費用をかけて、臭いをゼロにしたり「スケルトン」(コンクリートむき出し)という状態に部屋を戻さなくてはいけないケースもある。遺族が破産しかねないこともあります。「(孤独死の現場処理を)どうにかしろ」と言われても、どうしようもない。無関係な親族の孤独死の連絡が警察から突然来たら、自分でも困ると思います。

 そのツケは特殊清掃の業者さんに来ます。(遺族に)罵倒されたり、踏み倒されたり、作業した後に逃げられたりとか……。

 家族関係という物は、そこまで来ている。孤独死はすぐそこにあるのです。

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