鎌倉新書のビジネスはさまざまなトレンドが後押ししているが、懸念点もある。家族葬が増えてきたことに代表される、葬儀の簡素化だ。
「簡素なお葬式が増え、単価は下落していく傾向にある。マーケット全体としてみると、横ばいから微減だろう」と、清水社長は分析する。
そんな観点から、今後力を入れるのがより広い意味での「終活」だ。医療はもちろん、相続や遺言など、人生の終わりを見据えると備えておきたいことは数多い。
「健康寿命にさしかかると、死後に備えておきたいと考える人が急速に増えている。葬儀で終わりではない。ほかにも困りごとはある」(清水社長)
日本郵便と連携している「終活紹介サービス」のエリアを東京都全域に拡大したり、2月には海洋散骨を行うハウスボートクラブへ出資するなど、終活を軸にした事業の強化を進める。
20年1月期の売上高は34%増を見込むが、新規事業へ積極的に投資を行い、営業利益率は19年1月期よりダウンする計画だ。
これまでペット事業やシニア向けパソコン教室事業なども手がけていたが、19年中に撤退する。業績が想定を下回ったこともあるが、改めて葬儀領域へフォーカスする方針だ。
「なんでももうかればいいというものではない。社会的意義があった上での事業。(ペット事業やパソコン教室事業は)そこに対する視点が未熟で欠けていた。さらに黒字になる見込みも立たないので、早々にクローズする。これからは単なるシニア向けではなく、終活。終わりが来ることを意識した人が、それに備えることにフォーカスする」(清水社長)
会社の強みは事業領域ではなく、人材。葬儀領域のトッププレーヤーの1社として社会的意義を重視する、と清水社長は語る。
「多くの人は『どんな事業ですか』と聞いてくる。もちろん、高齢化社会 ✕ ITサービスというポジショニングは幸運にも良かった。でもそれよりも大事なのは人材だ」
インターネット事業は、在庫を持たず土地や工場なども必要ない。コストのほとんどが人件費だ。だから企業の成長においては、優秀な人材を確保して、働きやすい環境を整備することが最も重要だと強調した。
「経営手腕がどうだとか、目の付け所がどうだとか言っていただけることもあるが、ただ愚直に人を集めて、働きやすい風土を一緒に作っていく。そこを考え続けてきたことが、いまのところは数字になって表れてきている。そこに意識を傾けていくことが、私の大きな役割だ」(清水社長)
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