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事故物件、特殊清掃…… “死のリアル”になぜ私たちは引き付けられるのか目を背けたくなる現実(2/4 ページ)

» 2019年06月19日 07時00分 公開
[服部良祐ITmedia]

菅野: ただ、孤独死だと(不動産業者が入居者に)実際は告知していなかったりするのです。これは法的にグレーです。分譲マンションだと告知しますが、賃貸ならほぼしていませんね。ウジまみれの遺体があった場所に住みたいかというと……。

社会が“フタ”をしてきたテーマ

瀧野: でも、これからはそれが当たり前になるのです。

――高齢化に核家族化、個人主義が進み、人同士のつながりが希薄化することで、孤独死も増加するということですね。

瀧野: これらは今までずっと、(社会が)フタをしていたテーマなのだと思います。僕の考えでは、成長している時代には明るく楽しい話がぴったりで、死というテーマは合わなかった。今までは、フタをしていて良かったのです。

 でも最近、特別養護老人ホームで増えているのが、(施設内で)亡くなった人を玄関から送り出す取り組みです。入居者がみんな車いすで集まって、「頑張ったね」と声を掛ける。死に対するイメージが変わってきた。

photo 特殊清掃のある現場。ごみで一杯になった部屋も少なくない(菅野さん提供)

――「死」に対して興味本位な人が多い反面、「ちゃんと向き合わなくては」という流れも出てきたのかもしれません。孤独死の記事に対して、「明日はわが身かも」といったコメントが付くのを目にします。一方で菅野さんは、実際に孤独死の現場で働いている特殊清掃業者に密着し、著書で彼らの半生を描いています。「日々、死と向き合わざるを得ない」人々に着目したのはなぜですか。

菅野: 純粋に、なぜこういった(特殊清掃という)仕事を彼らがやっているのか、興味がありました。お金もうけが主な目的の人だって多くいました。特殊清掃の料金は1回に100万円とかすることもありますから。一方で同時に宗教についても取り組んでいる人がいたり、女性の業者さんもいるのです。

 (菅野さんの著作で登場する特殊清掃業者の)上東丙唆祥(じょうとう・ひさよし)さんは、強固な人間関係のある団地で育った後、この仕事をされています。団地的なコミュニティーが無くなった後に、そうして孤立していった故人の部屋を上東さんが清掃するという話から、ちょっと見えてくるものがあると感じました。

 こういった話は、新聞などもまだあまり取材していない部分だと思います。亡くなった方の歴史は、全部(遺品や)ごみになってしまうので……。

 さらに、私はもともと取材テーマに「生きづらさ」を挙げていたという点もあります。

――菅野さんは著作で、中学時代にいじめが原因で引きこもっていたという自身の過去を明かしています。

瀧野: 菅野さんは「生きづらさ」を取材しようとして、特殊清掃のテーマを追ったのですか?

菅野: 取材する中で(生きづらさというテーマが)見えてきた感じですね。「なぜこんな取材をやっているのか?」と考えていくことで、特殊清掃と生きづらさというテーマがつながった。

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