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ダメ会議は可視化せよ! 書くことで議論が急速に噛み合う、これだけの理由今日から始める“ダメ会議”脱却術(2/2 ページ)

» 2019年06月20日 07時00分 公開
[榊巻亮ITmedia]
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まずは「発言」をそのまま書く

 私が所属するコンサルティング会社のケンブリッジでは、書くことを「書き殴る」という意味を込めて「スクライブ」と呼んでいる。スクライブするのはホワイトボードでもいいし、模造紙でもいいのだが、イメージするのは難しいので、実際に例を挙げてみよう。

 ある会社では、コールセンターで働くオペレーターの離職率が高く、改善したいと思っていた。まずは何が原因なのか洗い出すことになり、関係者で会議を行った。メンバーは、コールセンターの課長、現場でオペレーターを束ねる田内さん、システムに詳しい幸田さんの3人だ。

課長:まず、離職の原因の洗い出しだ。仕事そのものがつまらないという話を聞くな

田内:ええ、毎日お客さんのクレームを聞くわけですから、キツイと思います。実際オペレーターからも、精神衛生上良くないという話も聞きますし……

幸田:せやかてな、クレームを聞くのは他社も同じやろ? そもそもコールセンターなんてクレーム受けるのが仕事みたいなもんやろ?

田内:いや、あの、他社と違うんだよ。一般消費者向けのコールセンターなら、個人相手だから、一つ一つのプレッシャーは小さいんだけど……。ウチみたいに企業相手のコールセンターだと、1つの対応でミスがあると、会社間の問題に発展する可能性があるわけで……。対応に気を使うんだよね

幸田:そんなん、個人でも法人でも同じやろ? 個人の方がややこしいお客さん多いで?

課長:確かにその要素はあるな。ウチのコールセンターは少し特殊かもしれない

幸田:いやいや、本質的には変わらんのと違います?

課長:いや、違いはたくさんあるだろう? 勤務時間も福利厚生も異なるし、大手コールセンターと比べると、場所もアレだしな。そういえば場所の話は出てないのか?

田内:確かに場所の問題はよく話題に出ますね。オペレーターさんはしょっちゅう文句言っています。駅からの距離がありすぎて、雨の日なんかに大変だって……

課長:そもそも、なぜ今の場所に拠点を移したんだ?

 ―――などと、会議は続いていった。何の変哲もない会議風景だが、これをこんな風に書けばいい。

 この会議はまず「仕事がつまらない」という話題から入り、それを受けて田内さんが「クレームがキツイ」と言っている。これをそのまま書く。

 次に、幸田さんが「キツさは他社と同じでは?」と聞いている。これは意見ではなく、質問だ。新たな論点と言い換えてもいい。だから「問」と書いて、論点であることを示す。

 この質問・論点が出たことで、話題は「離職原因を洗い出す」から「キツさが他社と同じかどうか」に移る。その証拠に、続く意見は「企業相手ではプレッシャーが大きい」「そうかもしれない」「本日は他社と同じでは?」になっている。だから、こんな風に段落を分けて書くとスッキリする。

 すると、質問に対する結論が出ていないことが分かるだろう。普通に議論していると分かりにくいが、書くと一発で分かる。

 議論は、問に対する答えの積み重ねで成り立っている。「何について議論しているのか」=「今、どの問に答えを出そうとしているのか?」をハッキリさせられれば、議論のかみ合わせは劇的に良くなるのだ。そのためには、書くことが極めて効果的だ。「問」と「結」は、意識して書いていくといいだろう。

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 たったこれだけで、複雑そうに見える議論もハッキリ見えるようになる。多少議論を聞き逃しても、内職していても、スクライブを見れば流れが分かるし、どの議論が中途半端になっているのかも見えるようになる。

 通常、「ホワイトボードに書く」というと、メモを書き殴ったり、システムやネットワークの構成図を書いて示したりするケースが多いのだが、そんな必要はない。議事録のように書けばいい。だたし、全員が見えるように書くのがポイントだ。

 言いっ放しで発言が消えていったり、「さっきの議論どうなったの?」「結論は?」と感じたりすることがあるなら、書くことで劇的に会議を改善できる。

 リアルタイムで書いていくのは、スピードも要求されるので難しいが、トライしてほしい。間違いなく効果がある。

著者プロフィール:榊巻亮

コンサルティング会社、ケンブリッジのコンサルタント。一級建築士。ファシリテーションとITを武器に変革プロジェクトを支援しています。

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連載:今日から始める“ダメ会議”脱却術

議論に集中できない、参加者が内職や居眠りをしている――。そんな“ダメ会議”からどうすれば脱却できるのか。会議の生産性を高めるポイントを、榊巻亮さんの著書『世界で一番やさしい会議の教科書』『世界で一番やさしい会議の教科書 実践編』から紹介します。

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