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ベストセラー『思考の整理学』著者・95歳“知の巨人”外山滋比古が語る「脱線のすすめ」「知的試行錯誤」のすすめ【前編】(1/3 ページ)

» 2019年06月21日 05時00分 公開
[外山滋比古ITmedia]
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編集部からのお知らせ:

本記事は、書籍『100年人生 七転び八転び――「知的試行錯誤」のすすめ(著・外山滋比古、さくら舎)』の中から一部抜粋し、転載したものです。


 大学生のバイブルともいわれ、東大生や京大生から根強い支持を集める『思考の整理学』(ちくま文庫)。今から30年以上前に発刊され、以降240万部を記録した大ベストセラーだ。コンピュータが社会で大きな役割を果たす時代の到来を予見し、暗記・記憶中心の学習よりも自ら考えることの大切さを説いた。

 著者である外山滋比古さんは、95歳の今でも研究を続ける「知の巨人」だ。ペリカンの万年筆で毎日執筆を続けているという。今月上梓した『100年人生 七転び八転び――「知的試行錯誤」のすすめ』の中から3回シリーズで、外山さんの歩んできた道のりとそこで考えた哲学、そして読者へのメッセージをお届けする。

 第1回目の前編では 「脱線のすすめ」と題して、人生を面白く生きるための思考法を紹介する。「『年をとると1年がとても早くなる』と聞くけれど、早く感じる人はおそらく、まだ“悪”が足らないのでしょうね」と、外山さんは言う。常識から脱線する意義について語ってもらった。

phot 外山さんは「エリートや優等生は、悪いところが少ないから、人間的に浅くなります」と言う(写真提供:ゲッティイメージズ)

面白いことがあれば大丈夫

 いつのまにか95歳になりました。生まれは大正12(1923)年、戦前です。90代になったら違った境地になるかとか、新たなものが見えてくるかとか聞かれることがありますが、いくつになってもあまり変わりません。

 戦争を体験してきたので、こどものころから、とにかく命が大事と思ってきた。その思いはいまでも変わりません。

 命が大事で、それに比べれば社会的な評価や職業などは、だんだんどうでもよくなってきます。ある程度のたくわえも必要だから、いちおうの準備はしておく。これもそのうち、もうこれ以上カネをためる必要はないという境地になってくる。

phot 100年人生 七転び八転び――「知的試行錯誤」のすすめ(著・外山滋比古、さくら舎)』

 すると、面白いこと、明日が楽しみというものがあるかないかで、年のとり方が大きく変わってくるのです。

 「100歳まであとどれくらい」と言われても、数字はあまり当てにならないからね。その気があってもなくても、生きるときは生きる。

 何でもいいんですが、面白いことがあれば、あまり年を気にしなくなるんじゃないか。年を気にしないのが、いちばんいい年のとり方じゃないかと思います。

 知的なものは知識が中心で、文法でいうと過去形。昔の事実、あったことを基本にして考えるものです。

 でも、頭は過去形だけでなく、現在形でも未来形でもはたらきます。むしろ、未来形で頭がはたらくほうが面白いことが出てくるのです。

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