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» 2019年06月25日 12時01分 公開

M&Aで人材採用 変わる中小企業の考え方 (2/2)

[斎藤健二,ITmedia]
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日本でも始まった人材採用のためのM&A

 経営承継支援が手がけたM&Aでは、少子化を背景に、人材採用を主目的としたものも増えてきているという。

 「人がいないという話が多い。薬局や介護、IT系のエンジニア、工事の職人が足りていない。タクシー会社がいい例だ。タクシーは減車規制で台数が減っているので、1台あたりの売り上げは上昇傾向。だが、中小企業だとドライバーが集まらない」(笹川氏)

 閉店しようとした薬局を、独立したい薬剤師が買うという例も出てきている。薬局には薬剤師が必須だが、従業員ごとM&Aすることでスムーズに出店できるからだ。

 売る側の意識も変化してきた。「昔は、もしかしたら息子が戻ってくるかもと、70代、80代の身体が動かなくなるまで頑張るという人も多かった。いまは50代、60代で決断する人が増えてきている」(笹川氏)

 あるタクシー会社を経営する50代後半の社長は、自身が事業を親から引き継いだ2代目だ。当時、自分自身が事業を継ぎたくなかったのを思い出して、「息子に無理やり継がせていいのか?」と売却を決めたという。

 「息子に継がせるのをはばかるのは、事業の5年後を見据えたとき。今のうちのどこかのグループに入って、資金繰りを気にしないで、サラリーマン社長をやるのもひとつじゃないかと」(笹川氏)

 家業を継ぐのが当たり前から、自分のやりたい仕事を続けたほうがいいと、世の中の仕事に対する考え方も変わってきた。そうなると、事業の売却を模索することになるが、需要に対してマッチングさせる仕組みは追いついていない。「売り上げ1億未満の78%は跡継ぎがいない。本当に困っているのはここの部分だ」(笹川氏)

中小企業が大きくなれない理由

 後継者不足のほかにも、中小企業の生き残りのためにはM&Aが必要だと笹川氏は話す。中小企業庁のレポートによると、大企業と中小企業の間には、生産性に2倍以上の開きがある。そして、リーマンショック以降、大企業が20〜30%生産性を伸ばしているのに対して、中小企業では7〜9%しか伸びていない。

中小企業庁のレポートより

 生産性を向上させるためにはIT活用などが挙げられるが、それには資金も知識を持った人材も必要だ。大企業は中長期を見据えて投資できるが、家族経営に近い中小企業にはなかなか難しい。

 「事業承継だけでなく、中小企業は会社の生き残りを模索しなくてはならない。中小企業が大きくなれないのは、(資金や人材など)足りないものがあるから。これを解決するのに簡単なのはM&A。中小企業の統合はより活性化すると思う」(笹川氏)

 昨今、中小企業の経営者が次代の変化を感じ取り、前向きなM&Aを検討するようになったが、経営者の周辺はまだ意識が昔のままの場合もあるようだ。企業売却を検討する際に、相談する先は顧問の税理士や弁護士だが、士業の意識はまだ変わっていない。

 「顧問の先生がいろいろなリスクを言ってくる。的確なリスク判断は難しい」と笹川氏。

 深刻化する後継者問題だけでなく、日本の産業の生産性を底上げするためにも、中小企業のM&Aを支援する取り組みが重要になってきている。

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