「15年前は、息子が会社を継ぐと思っていたのですが……」
そう話すのは、東京都荒川区の内装工事会社、清建を創業した戸張勝一さん(74)。2017年末まで、社長として従業員や職人たちを率いてきた。
引退を考え始めたのはその1年ほど前。70歳を超えたことに加え、病気を抱えて体調に不安があったからだ。しかし、大きな問題があった。それは「後継者がいない」ということだ。
以前は長男が「継いでもいい」と言っていた。しかし、その話が本格的に進んでいくことはなかった。子どもには苦労している姿をたくさん見せてきた。無理強いはできない。「だんだん『継ぐ意思はないのだろう』と思うようになりました」
清建は、約10人の社員のほか、会社に常駐する職人約60人を抱えている。年商は約7億円。大手ゼネコンとも取引がある。取引先とは長年にわたって信頼関係を築いてきた。廃業も考えたが、それも簡単ではない。残っている仕事をこなす間、新しい仕事を受けることはできず、事業をたたむまでにかかるコストは少なくない。どうすればいいのか――。
清建のような後継者問題を抱える中小企業は多い。帝国データバンクの調査によると、国内企業の3分の2にあたる66.5%で後継者が決まっていない。さらに、売り上げ規模が小さい企業に絞ると、年商1億円以上10億円未満では68.6%、1億円未満だと78.0%にその比率が跳ね上がる。後継者不在は身近な問題だ。
戸張さんは付き合いのある会計事務所に相談を重ねた。何度か通って紹介してもらったのは、M&A(合併・買収)という手段。事業を他の企業に譲り渡し、経営を担ってもらう方法だ。
とは言っても、どこの企業が引き受けてくれるのか。社員や職人たち、取引先を維持できるのか。戸張さんは、中小企業の事業承継支援を手掛ける、株式会社経営承継支援(東京都千代田区)を頼り、何度も相談に行くことになる。
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