戸張さんは会社を譲るとき、「社員には『今よりも発展するよ』と説明した」。それでも、経営承継支援の担当コンサルタントが清建の社員らと話をしたところ、彼らは「社長がもうけるために会社を売った」と思っていた。譲渡額よりも従業員の待遇を重視して譲渡先を選んだことを担当者が伝えたところ、戸張さんの思いを知った社員らは涙を流したという。
清建を受け継いだ湯本さんは、業務改革に乗り出した。まず手を付けたのが、事業所にあるトイレだ。建物は古く、トイレは和式のみ。しかも、男性用トイレを通らないと女性用トイレには入れない構造だった。「学校にも温水洗浄便座がある時代に……」と驚いた湯本さんは、新しく洋式トイレを設置。手を出すと自動で湯が出る洗面台も設けた。
社内で使用しているPCも刷新。湯本内装とデータ連携できる受注管理や経理のシステムを導入し、湯本内装の社員にその使用方法を教えに行かせた。また、コピー機を新しくしたほか、社用の携帯電話も支給した。業務自体は以前と変わらないが、快適に働ける環境を整えようとしている。
会社を譲ってから約9カ月。戸張さんは今の清建を見て、「何よりうれしいのが、誰もやめていないことです」と話す。特に職人は、独立したり、他の会社と取引したりすることもできる。それでも、以前と変わらず働いてくれている。戸張さんは「湯本さんにお任せしてよかった」と笑顔を見せる。
湯本さんは、清建の今後について「業務フローなどを(湯本内装と)同じレベルに引き上げて、売り上げ20億円を目標に事業拡大していきたい」と意気込む。
このように、2社のM&Aは現状ではうまくいっている。相性の良い会社と巡り会えたのは、なぜだろうか。
契約書を交わした清建元社長の戸張さん(左)と湯本内装社長の湯本さん
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